日々何気なく使っている単位。この様々な単位が実は世界を動かしているって、ご存知でしょうか。今日は意外と知らない単位について解説します。
■「メートル」は光のスピードからできている!?
この記事の写真世界共通の単位となっている、メートル。あの長さを1メートルと決めたのは一体誰なのか、そしてどうやって決めたのか、ご存知でしょうか?
工業が発達し、国同士の交流が活発となってきた18世紀ごろのヨーロッパで、「世界共通の単位を作ろう!」と提唱したのはフランス革命でおなじみのフランスの政治家、タレーランでした。国や地域によって単位が違えば色々な取引で混乱してしまいます。そこでタレーランから命をうけた科学者たちは「北極から赤道までの子午線上の距離」の1000万分の1を1メートルとしよう、そう考えたんです。
では北極から赤道までの距離をどうやって測ったのでしょうか?実際にこの距離を歩いて測るのは大変です。そこで6年をかけてスペインのバルセロナからダンケルクまでの距離を測り、そこから計算したんです。
ちなみに「メートル」の語源はギリシャ語の「測ること」という意味を持つメトロンです。人の名前から来る単位もたくさんありますが、これは違うんですね。
そして1メートルが決まったことで、10センチの立方体に入る量を1リットル、その水の重さを1キログラム、など「メートル法」の単位が決まっていったんです。
ではこの1メートルの長さをどうやって世界に伝えたのでしょうか。フランスがメートル原器と呼ばれる1メートルの金属を作り、これをメートル法の加盟国に配ったんです。でも人が作るものですから当然誤差はでますよね。そして金属ですから劣化したり、温度によって伸びたり縮んだりもします。
そこで今では光が真空中を2億9979万2458分の1秒間に進んだ距離を1メートル、と定義しています。光は1秒間に地球を7周半する、と言われています。そこから計算したんですね。これなら気温や人によってずれることがありません。
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■アメリカはプライドで「メートル」を使わない!?■アメリカはプライドで「メートル」を使わない!?
今年はメジャーリーグの試合をご覧になった方も多いのではないでしょうか。試合を見ていると、ピッチャーの球速がキロメートルではなく「マイル」で表示されていましたよね。このマイルやヤード、ガロンやポンド、といった単位は「ヤードポンド法」と呼ばれるものです。1824年にイギリスで誕生しました。イギリスは1960年代から徐々にメートル法へと切り替わってきていますが、アメリカはずっと今も使い続けているんですね。
ではなぜアメリカは世界の流れに反してヤードやポンドを使い続けているんでしょうか。まずはコストの問題です。アメリカは大変大きいですから、道路標識などをすべて変更するとなったら莫大なお金がかかります。そしてもう一つ言われているのが、超大国としての「プライド」です。なぜフランスが作った単位を俺たちが使わないといけないんだ!…とそんなアメリカファーストの思いがあると言われています。つまりアメリカは単位の基準を握りたい、そう考えているわけですね。
でも中にはヤードポンド法による表示が世界基準となっているものもあります。
例えば皆さんが今目にしている画面です。例えばこのテレビは40インチ、このPCは14インチ、なんて言いますが、これはどこのサイズが40インチなのかわかりますか?画面の縦とか横の長さ、と思った皆さん、残念です。正解は画面の対角線、斜めの線の長さです。
このほかにも飛行機の高度もフィートで表しますよね。これも航空業界をアメリカがけん引する立場だからと言われています。
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■ドルが世界の「お金」となった理由とは■ドルが世界の「お金」となった理由とは
世界を動かす単位と言えばお金もその一つです。そして世界の通貨と言えば、やっぱりドルです。どの程度ドルが世界を動かしているかというと、こんな驚きのデータがあります。
世界中で取引される貿易など決済のためにはお金が必要ですよね。そこで使われ通貨のうち、ドルが占める割合はどのくらいだと思いますか?これは外国為替市場の取引を見ていくとわかります。答えは約88%、実に9割近くです(通貨ペア別取引高シェア)。これだけ世界の取引でドルが使われているんですね。
ちなみにこの外国為替市場での取引きのうち、一番多いのはドルとユーロの交換です。その次はなんとドルと日本円です。日本円の流通量も多いということですね。
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■ウクライナとロシアの戦いで「人民元」が大躍進!?■ウクライナとロシアの戦いで「人民元」が大躍進!?
そんな中、いまドルにとって代わる勢いで流通量を伸ばしているのが中国の「人民元」です。でも中国の経済発展の勢いは今ちょっと衰えを見せています。不動産バブルがはじけた影響などで、経済の伸び率はイマイチ、というニュースをご覧になった方も多いでしょう。そんな中でも人民元の流通量が伸びている理由はウクライナとロシアの戦いです。
いまロシアはアメリカなど西側諸国からの経済制裁を受けています。そのためロシアは輸入に不可欠なドルが手に入りにくい状況です。でも中国はこれまでと変わらずロシアとの貿易を続けています。そこで登場するのが人民元です。例えばロシアの原油を輸入する際に人民元で支払い、ロシアもその人民元を使って中国のものを輸入する…そんな人民元を介しての取引が成立しているんです。結果近隣諸国にもその動きが広まり、人民元経済圏が徐々に形成されてきている、と言われています。
経済制裁をすればするほど人民元が広がっていく、きわめて皮肉な結果となっているんですね。
単位はこうしてみてくると実に奥が深いですし、知らないこともたくさんあったと思います。単位を統一することで世界経済は発展してきた、そんなことを実感していただけるんじゃないでしょうか。
(池上彰のニュースそうだったのか!!11月2日OAより)
辛さの単位やcaratとkaratの違いなど、単位についてもっと知りたい方はTVerへ!
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