25日の東京外国為替市場では円相場が一時、1ドル=155円台まで下落し、1990年6月以来、約34年ぶりの円安ドル高水準となった。最近の円安は、インフレ抑制で政策金利の引き上げを進める米国と低金利政策を維持する日本との金利差拡大により、資産運用で不利な円が売られるというのが主要因だ。一方で34年前の円安は、バブル景気に沸く日本企業が米国企業を次々と買収した時期で、ドル資金を得るための円売り・ドル買いが進んだことも要因とされる。いわば日本経済の強さを背景にしたものだった。
1990年は米企業買収のドル資金集め要因
1980年代後半から90年代初頭までは、日本は株価も地価も上がるバブル景気で企業の好業績が続いていた。この時期には、日本企業が海外企業の買収を進めたが、とりわけ米国企業の買収が目立った。代表的なものでは、89年10月に三菱地所がニューヨークのロックフェラーセンターを約1200億円で買収すれば、同年9月にはハリウッドではソニーがコロンビア・ピクチャーズ・エンターテインメントを約6700億円で、90年11月には松下電器産業(現パナソニック)がMCA(現NBCユニバーサル)を約7800億円でそれぞれ買収している。
当時、日本企業が海外企業を巨額で買収する際、必要な外貨資金は円を売って米ドルなどの外貨を買うことで調達していた。そのため為替相場も円安に反応することがあった。
ただ、近年は外債の発行や外貨預金を使い買収資金を調達するなど多様化しており、数兆円規模の巨額買収案件があっても為替相場の反応は鈍くなっているようだ。(西村利也)
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