ロシア、中国、インドなど有力新興国でつくる「BRICS」首脳会議の本会議が23日、露中部カザンで開かれた。今年、加盟国が拡大して以降で初めて首脳が一堂に会して議論する。議長国ロシアのプーチン大統領は中国と共に、欧米への対抗軸として結束を強めたい構えだ。ただ、各国の思惑はさまざまで、加盟国拡大で足並みをそろえるのが難しくなる可能性もある。
会議では、新たな拡大の枠組みとして「パートナー国」の創設が検討されるほか、ウクライナや中東の紛争も主な議題となる。ロシアは欧米の経済制裁によって締め出された国際決済システム「国際銀行間通信協会(SWIFT)」の代替システムの構築も提案する見通しだ。24日に招待国も含めた拡大会議を開いた後、総括文書「カザン宣言」を発表する。
制裁の抜け穴増やしたい露
プーチン氏は23日、本会議で「(BRICSは)世界の安定と安全保障に真にプラスの影響を与え、深刻な地域問題の解決に大きく貢献している」と強調。「世界の多数派の願望に応えるものであり、世界の多極化が進むいま、特に必要とされている」と訴えた。
露政府の発表によると、BRICSには30カ国以上が加盟や提携を希望しているとされる。今回の首脳会議には招待国としてアジアやアフリカなどから36カ国が参加し、そのうち22カ国の首脳級が出席した。
ロシアが続けるウクライナでの「特別軍事作戦」を巡り、欧米は対露経済制裁を科してきた。プーチン政権としては、自国での国際会議に多数の国が代表を送ったことを強調し、「ロシアは孤立していない」(ペスコフ大統領報道官)と示したい考えがある。
ロシアには、各国と個別の首脳会談なども通じて経済関係を強化し、制裁の「抜け穴」を増やす思惑もあるとみられる。
プーチン氏は首脳会議にパレスチナ自治政府のアッバス議長も招待した。イスラエルを擁護する欧米への反発を強めるイスラム諸国の取り込みを図りたい中露の狙いも透ける。
「反欧米」の枠組み弱まる恐れも
ただ、中露の意図とは別に、会議の参加国には「反欧米」と見なされることを避けたい国も少なくない。特にインドは欧米とロシアの双方と良好な関係を維持し、日米豪印の協力枠組み「クアッド」の一員でもある。中国とは領土問題を抱える。
政治的思惑は眼中になく、経済効果に期待して接近する国もある。6月に加盟申請したタイや、加盟に関心を示すベトナムがそういった国だ。
タイは欧米主導の経済協力開発機構(OECD)への加盟も目指す。ベトナムは、南シナ海に海洋進出する中国への警戒感から2023年9月に米国との関係を「包括的戦略パートナーシップ」に格上げしている。
こうした中、ロシアとしても、BRICSの拡大路線一辺倒ではない模様だ。
首脳会議を前に、プーチン氏は拡大問題は「慎重に検討する必要がある」と言及。外交を担当するウシャコフ大統領補佐官は「多くの国々を即座に加盟させるのは非論理的だ。そうなれば、形を持たない枠組みになってしまう」と踏み込んで懸念を示した。
米カーネギー国際平和財団のスチュワート・パトリック上席研究員は9日発表の論考で、BRICSの拡大はむしろ「統一的な政策的立場の追求を難しくする可能性がある」と分析する。従来は「欧米支配」への反対姿勢で存在感を示してきた枠組みが、「多様な国々を加えることで主張が複雑化し、国際的な影響力を弱めることになるだろう」と指摘している。【モスクワ山衛守剛】
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