【ニューヨーク=平田雄介】国連安全保障理事会で24日、日本と米国が起草した宇宙空間への核兵器と大量破壊兵器の配備を防ぐ決議案にロシアが拒否権を発動し、同案は否決された。安保理15理事国中13カ国が賛成し、中国は棄権した。
プーチン露大統領は否定するが、ロシアは宇宙空間に配備する対衛星核兵器を開発中と伝えられる。ロシアの拒否権行使に関して米国のウッド国連次席大使が「何かを隠していると疑わざるを得ない」と疑念をあらわにした。米国は中国についても「無責任なロシアを『ジュニア・パートナー』として擁護した」と痛烈に皮肉った。
ロシアの対衛星核兵器開発疑惑が注目されるのは、ウクライナ戦争で使用中のドローンなど、軍事力が宇宙空間に配備された人工衛星と接続して運用されているためだ。ロイター通信によれば、米国の情報当局者は「ロシアは核兵器を宇宙空間に配備して爆発させ、その電磁波で衛星ネットワークを無力化する能力を持っている」とみている。
衛星ネットワークは気象や農業など民生分野にも利用されており、攻撃を受ければ、社会経済活動が広範囲で混乱する。
日米の決議案はこうした事態を防ぎ、宇宙空間の平和利用を促す内容。日米を含む65カ国が共同提案国となった。山崎和之国連大使は「重要な決議案に対して一致できないのは理解に苦しむ」とロシアを批判。中国代表は「米国の非難には根拠がない」と反論した。ロシアは近く独自の決議案を提出する方針。
中国は、決議案の交渉過程でロシアと足並みをそろえ、24日にはロシアと共に「宇宙空間へのあらゆる兵器の配備を防ぐ」とする修正提案を行った。修正提案は、採択に必要な票数を得られず否決されたが、アルジェリアやガイアナ、エクアドル、シエラレオネが賛成に回り、中露の「グローバルサウス」を引きつける力を印象づけた。
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