米グーグルの本社=米西部マウンテンビューで2023年11月18日、大久保渉撮影

 米検索大手グーグルは14日、「小型モジュール炉(SMR)」と呼ばれる新型の原発から供給される電力の購入契約を結んだと発表した。2030年までに最初の炉が稼働を始め、35年までに追加稼働する分を合わせ、最大50万キロワットを購入する計画。生成人工知能(AI)向けのデータセンター建設で将来の電力需要が急増する事態に備える。

 SMRを開発する米新興企業「カイロス・パワー」と契約を結んだ。金額など契約条件の詳細は明らかにしていない。米メディアによると、5万キロワットの炉を30年までに稼働させたうえで、35年までに7・5万キロワットの炉6基を追加で稼働させる計画だという。

 グーグルは稼働中に二酸化炭素(CO2)を排出しない原発をクリーンで安定的な電力と位置づけ、再生可能エネルギーと同様に後押ししていく方針だ。声明で「クリーンエネルギーへの転換を加速させるため、複数のSMRから電力を購入する世界初の契約に署名した。国家競争力と経済成長を促すAIをサポートするため、新たな電源が必要だ」とした。

 SMRは小規模で建設費を抑制できるとされる次世代型の原子炉。従来の大型炉はコスト高で採算が合わないため建設計画が頓挫しており、それらに代わって普及の見込みがあるとして、米新興企業などが開発を進めている。

 カイロス・パワーは今夏に米原子力規制委員会(NRC)の承認を得て実証炉の建設を始めた。ただ、先行する米新興企業ニュースケール・パワーが23年11月にSMR計画中止を発表するなどしており、今後の開発は難航も予想される。

 米国では、南部ジョージア州で23~24年にかけて大型炉のボーグル3、4号機(出力はそれぞれ約110万キロワット)が商業運転を始めた。ただ、建設コスト上昇のあおりで消費者が負担する電力料金は上昇した。【ワシントン大久保渉】

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