日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)へのノーベル平和賞授与決定について、英BBC放送は11日、「議論を呼ぶ候補を避ける」判断だったと伝えた。有力視されていた国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)などには反対論も根強いため、ノルウェーのノーベル賞委員会が、誰もが納得する「論争にならない選択肢」(BBC)を重視したとの見方だ。
中東やウクライナで戦火が絶えない中、欧州の研究機関やメディアは今年、UNRWAのほか、国際司法裁判所(ICJ)、国際刑事裁判所(ICC)などを有力候補に挙げてきた。
昨年の受賞者を的中させたノルウェーの民間研究機関・オスロ国際平和研究所のウーダル所長は、今年はUNRWAやICJ、全欧安保協力機構(OSCE)民主制度・人権事務所が有力と発表していた。ロイター通信もUNRWAやICJ、グテレス国連事務総長が有力と伝えた。
だがパレスチナ自治区ガザ地区の人々を支援するUNRWAは、昨年10月に起きたイスラム組織ハマスによるイスラエル攻撃への関与が疑われている。このため、UNRWAに賞を与えないよう求める署名活動も始まっていた。
また、ICJなどが受賞となった場合もイスラエルやその強固な同盟国・米国の反発が予想された。ICJはイスラエルに対し、ガザでのジェノサイド(集団殺害)を防ぐ対策を講じるよう命じており、ICCの検察局もイスラエルのネタニヤフ首相の逮捕状を請求している。
一方、ロイター通信によると、UNRWA幹部は日本被団協の受賞決定について「良い選択」としながらも、「(UNRWAがもし選ばれていたら)パレスチナ難民にとって素晴らしいメッセージになっただろう」とも語った。【ロンドン篠田航一】
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