国連本部=米ニューヨークで2024年10月1日、八田浩輔撮影

 パレスチナ自治区ガザ地区の戦闘をめぐり、国連の独立調査委員会は10日発表した報告書で、医療従事者や医療機関に「容赦なく意図的な攻撃」を続けるイスラエル軍の行為は、戦争犯罪と特定の集団を絶滅させる人道に対する罪にあたると非難した。

 イスラエル軍とイスラム組織ハマス双方に、人質に対する性暴力などへの責任があるとも指摘した。調査委を率いたピレイ元国連人権高等弁務官は声明で、「イスラエルは、医療施設に対する前例のない無謀な破壊行為を直ちに停止しなければならない」と訴えた。

 報告書は、イスラエル軍はガザの医療関係者を故意に殺害、勾留、拷問していると指摘した。戦争犯罪の具体例の一つとして、今年1月末に子ども5人を含む7人家族が乗る避難車両と、近くを走る人道支援組織の救急車が相次いで砲撃を受け、救急隊員2人を合わせた9人全員が死亡した事件を検証。現場はイスラエル軍によって立ち入りが妨げられ、遺体が回収されたのは12日後だったという。事件について「合理的な根拠」に基づき、イスラエル軍に責任があると結論づけた。

 調査委はイスラエル政府とハマスなどに対し、すべての人質の保護と即時解放を訴えている。また、国際司法裁判所(ICJ)の勧告的意見に従い、イスラエルにパレスチナにおける「不法」な占領政策を停止し、パレスチナ人被害者に賠償するよう求めた。

 報告書は今月末に国連総会に提出される。米紙ニューヨーク・タイムズによると、イスラエルのダノン国連大使は、報告書について「現実離れしており、イスラエルに関する根拠のない主張が含まれている」と反発した。【ニューヨーク八田浩輔】

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。