レバノン南部に展開する国連レバノン暫定軍(UNIFIL)は10日、イスラエル軍がUNIFILの拠点に対して攻撃を繰り返し、負傷者が出たと発表した。攻撃は国際人道法や国連安全保障理事会の決議に違反していると批判し、イスラエル軍に対応を求めていると明らかにした。
レバノン南部ではイスラエル軍がイスラム教シーア派組織ヒズボラ掃討に向けた地上侵攻を進めている。
発表によると、国境付近では9日、イスラエル軍の戦車がUNIFILの拠点を狙って砲撃を行い、監視カメラなどが破壊された。10日には南部ナクラにあるUNIFIL本部の監視塔も砲撃を受けて2人が負傷したほか、別の施設でも銃撃により車両や通信システムが壊された。
イスラエル軍は10日、「ヒズボラの戦闘員がUNIFILの拠点付近で活動している」と主張し、「UNIFILに安全な場所にとどまるよう指示してから砲撃した」と説明した。
一方、ロイター通信によると、UNIFILに多くの兵員を出しているイタリアのクロセット国防相は記者会見で、イスラエルの攻撃は「ミスや事故ではない。戦争犯罪の可能性がある」と非難し、イスラエルに抗議したと明らかにした。フランス外務省も声明で「深く遺憾に思う」と批判した。
UNIFILは1978年、イスラエル軍がパレスチナ解放機構(PLO)掃討のためレバノン南部へ侵攻した際、イスラエル軍撤退の確認や南部地域の安定などを目的に創設され、その後も国境付近で停戦監視を続けてきた。50カ国から計1万人以上の兵士が参加しており、レバノン軍と合同でパトロールや地雷除去などの任務を行っている。イスラエル軍は今回の地上侵攻にともない国境付近から撤退するよう求めたが、UNIFILは応じていなかった。【カイロ金子淳】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。