ノーベル文学賞に決まった韓江氏=ソウルで2016年5月、AP

 スウェーデン・アカデミーは10日、2024年のノーベル文学賞を、韓国の女性作家、韓江(ハンガン)氏(53)に授与すると発表した。授賞理由は「歴史のトラウマと向き合い、人の命のはかなさをあらわにする強度の高い詩的散文に対して」。アジア人女性がノーベル文学賞を受賞するのは初となる。韓国人のノーベル賞受賞は00年に平和賞を受賞した金大中氏(故人)以来2人目。

 1970年、韓国・光州生まれ。父に小説家の韓勝源(ハンスンウォン)氏を持つ。93年、文芸誌に詩を発表し、94年の「赤い碇」で作家デビュー。05年に韓国最高峰の李箱文学賞を受賞し、88年に同賞を受賞した父と並ぶ、初の“親子受賞”が話題になった。

 16年「菜食主義者」で英国で最も権威のある文学賞・ブッカー国際賞をアジア人で初めて受賞。社会の抑圧にさらされる女性の姿を描き、ジェンダー問題への意識の高さを作品に描き込んだ。

 14年の「少年が来る」では、民主化を求めた市民らに軍が発砲し殺害された民衆蜂起弾圧事件「光州事件」を題材とし、死者の声を丹念に丁寧に拾い上げた。一貫して欲望や抑圧、生と死を描くことで知られ、16年の「すべての、白いものたちの」が再びブッカー国際賞にノミネートされて世界的な注目を集めた。

 23年には、米軍政下の済州島で48年に起きた民衆殺害事件「済州島4・3事件」を題材にした「別れを告げない」で、仏メディシス賞(外国小説部門)を韓国人として初めて受賞。さらに24年、仏エミール・ギメ・アジア文学賞を受賞した。

 授賞式は12月10日にストックホルムで開かれ、賞金1100万スウェーデンクローナ(約1億6000万円)が贈られる。

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