ベルリンの空港で合流した五十嵐朋子記者(左)と夫の諏訪正晃=ベルリン・ブランデンブルク国際空港で2024年4月6日午前9時16分、空港利用者撮影

 配偶者の海外転勤のため、休職して同行するのは女性が約9割――。2014年に公務員を対象に始まり、一般企業にも広がる「配偶者同行休業」制度。だが、制度発足から10年が経過しても、日本では男性の海外赴任が大半を占め、女性が付き添う立場であることがうかがえる。

 人事院によると、一般職の国家公務員で、22年度に新たに制度を利用した人は83人で、うち74人が女性だった。総務省によると、地方公務員では278人中266人が女性だった。

 だが、私の場合は状況が異なる。4月に毎日新聞ベルリン支局に配属された私(女性記者、38歳)の夫、諏訪正晃(38)は東京都内の区役所職員だが、この制度を利用してドイツにやってきた。

 この制度があると気づく前、夫は仕事を辞めることも考えたようだ。でも、その必要がなくて良かった。なぜなら夫は、高校時代のスキー事故で脊髄(せきずい)を損傷し、車いすを使う障害者だからだ。再就職が必要になった場合、「普通の人」よりハードルが高かったかもしれない。

 そして私は今、不妊治療の成果が出て妊娠5カ月。この夏、赴任したばかりのドイツで出産する予定だ。この制度を使って車いすの夫が休職し、現地で出産や育児を経験する夫婦は珍しいのではないだろうか。

 夫は多少の不安はあるようだが、海外暮らしをおおむね楽しみにしているようだ。実は夫は、障害者スポーツのパラカヌーに取り組み、世界選手権で7位に入ったこともあるスポーツマン。スポーツでの経験が前向きに作用しているのかもしれない。

 欧州でも人権を重視するイメージが強いドイツだが、障害者と健常者、外国人とドイツ人の間にバリアーはあるのだろうか。レアケースであろう自身の経験を通じ、日々気づいたことをつづっていこうと思う。【ベルリン五十嵐朋子】

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