BYDが初公開した新型EV=北京市で2024年4月25日、毎日新聞中国総局助手撮影

 欧州連合(EU)の欧州委員会は4日、中国から輸入した電気自動車(EV)に最大約35%の追加関税を課す案について加盟国の投票を行い、課税に必要な支持を得たと発表した。ただ、加盟国の中には中国との通商対立の拡大を懸念する声も根強い。課税案を提出した欧州委員会は今後、中国と交渉し、課税を実施するかどうか10月末までに最終判断するが、折り合えるかは見通せない。

 ロイター通信などによるとEU27カ国のうち、10カ国が賛成し、ドイツなど5カ国が反対。12カ国が棄権した。

 欧州では、中国製のEVが低価格を武器に市場占有率(シェア)を急拡大していた。欧州委員会は昨年10月からの調査で、安値攻勢の背景に中国政府の過剰な補助金があると断定。6月以降、中国当局やメーカー各社と交渉を続けながら複数回、追加の関税案を示してきた。

 ロイター通信などによると、加盟国に示した最新案では、追加関税率は中国で生産する米テスラの7・8%が最低で、中国大手の上海汽車集団(SAIC)が35・3%で最高。中国大手の比亜迪(BYD)は17%。いずれも従来の関税率10%に上乗せする。

 ただ、EU加盟国の中でも追加関税措置を巡っては温度差がある。

 フランスのマクロン大統領は中国の過剰補助金について「耐えがたい」と批判する。その一方、中国で事業を展開する自動車大手を多く抱えるドイツのリントナー財務相は「中国との貿易戦争は、欧州の中核産業とドイツの重要分野に損害を与える」と追加関税に慎重な姿勢を示していた。豚肉製品の輸出国であるスペインも再考を促していた。

 一方、中国側は強く反発している。中国国営メディアによると、欧州に進出している中国の企業でつくるEU中国商会は4日、「関税の発動を延期し、貿易摩擦の激化を避けるべきだ」と強い不満を表明した。「中国EVの優位性は補助金によるものでなく、市場競争の下で培われたサプライチェーン(供給網)全体の優位性によるものである」と強調。「追加関税は中国企業だけでなく、中国でEVを生産する欧州企業にとってもマイナスである」と主張した。【岡大介(ブリュッセル)、松倉佑輔】

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