11月の米大統領選に向け、民主党のハリス副大統領が新たな課題に直面している。接戦州を含む南部の州で200人以上の犠牲者が出ているハリケーン被害への対応に加え、中東ではイランがイスラエルをミサイルで攻撃し緊張が高まる。共和党のトランプ前大統領はハリス氏を含むバイデン政権への批判を強めており、ハリス氏陣営は対応に躍起だ。
「(バイデン)大統領と私は支援が一刻も早く現地に届くよう注意を払ってきた。我々は長くここにいる」。ハリス氏は2日、視察に訪れたハリケーン「ヘレン」の被災地の一つで接戦州でもある南部ジョージア州でこう強調した。
ハリケーンでは、ジョージア州のほか、同じく接戦7州のうちの一つのノースカロライナ州などで被害が出た。AP通信によると、3日午後時点で215人が死亡。2005年に1300人以上が犠牲になったハリケーン「カトリーナ」に次ぐ被害の規模で、バイデン氏も被災地を視察した。
過去には災害対応が選挙戦に影響を与えたとみられるケースもある。
12年の大統領選では、投票日直前の10月末に米東部をハリケーン「サンディ」が襲った。再選を目指していた民主党のオバマ氏は選挙戦を離脱し、被災地を視察するなどして指導力のアピールに成功し、共和党のロムニー氏を破る一因になったとされる。
また05年には当時の共和党のブッシュ(子)大統領がカトリーナへの対応で批判を浴び、翌年の中間選挙で民主党が上下両院で多数派を奪還することにつながった。
機を見るに敏なトランプ氏はハリス氏に先行して9月30日にジョージア州入り。「選挙は最終盤だが、市民が助けを必要としている時に政治をやっている場合ではない」などと指導力をアピールし、ハリス氏が選挙戦を優先させていると批判した。
また、イスラエルとイランの対立で緊張が高まる中東情勢もハリス氏にとっては、対応が難しい問題の一つだ。1日にあったイランによるミサイル攻撃後、ハリス氏は「イスラエルは我々の支援を受けて攻撃を撃退できた。我々の共同防衛は効果的で、多くの命を救った」などと述べ、イスラエルを支持する姿勢を強調した。
だがパレスチナ自治区ガザ地区で続く戦闘を巡って、イスラエルの後ろ盾となってきたバイデン政権への批判は高まっている。従来の民主党の支持基盤だったイスラム教徒の支持離れも指摘されている。
こうした中、ホワイトハウスによると、ハリス氏の国家安全保障顧問を務めるゴードン氏は2日、在米のイスラム教の指導者らとオンラインの会合を開催。ガザ地区での停戦を目指す姿勢を強調した上、イスラエル軍が侵攻したレバノンでの民間人の状況に懸念を示した。イスラム教徒に配慮する姿勢を示す狙いがあったとみられる。
一方、トランプ氏はイランの攻撃について「私が政権にいれば起きなかった」などと主張。中東の不安定化はバイデン政権の指導力不足が原因だとして、批判を強めている。【ワシントン松井聡】
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