イスラエル軍の地上部隊が、レバノン南部に入り込んでいる映像が公開され始めました。
■レバノン地上侵攻は“苦戦”
CNN・ハンコックス特派員
「レバノン軍からの情報です。イスラエル軍は3回にわたり、400メートルほどレバノンに入り、攻撃を加えた。イスラエルでは、8人の兵士が殺害された。イスラエル側の戦死者は、地上侵攻が始まって、初めて」
死亡した兵士8人全員が、精鋭部隊の所属だとイスラエル軍が認めています。ヒズボラは、地下トンネルを張りめぐらせ、ゲリラ戦を仕掛けているとみられ、進軍にてこずっている可能性もあります。
ヒズボラ・アフィフ報道官
「ヒズボラの部隊は勇敢に戦っていて、今朝は国境沿いのアダイサで戦った。敵軍の死者数は相当な数。その実態を報道され始めている。」
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■レバノン在住日本人に危機感■レバノン在住日本人に危機感
イスラエル軍は、地上侵攻と平行して、首都・ベイルートへの空爆のレベルも引き上げました。レバノンの国会や国連の拠点本部のすぐ近くに落下し、少なくとも9人が死亡しています。
着弾地点からそれほど離れていない場所に日本人が住んでいます。
ベイルートのオーケストラのチューバ奏者・岡島征輝さん(42)です。
ベイルート在住・岡島征輝さん
「昨夜、日付が変わってすぐごろ、ここから東に2キロほど進んだところで、ベイルートの中心部で初めて被害が出たという報道がありました。(Q.近くにシェルターは)まったくないですね。聞いたこともないですし。ある日、突然、自分の家の隣が爆撃される可能性だって、ないこともないわけですよね。実際に、ここ1日、2日でかなりベイルートの中心部に迫ってきている」
すでに15カ国以上が、自国民を退避させるために、艦船や輸送機の派遣などを始めています。日本も緊急退避に備え、3日午前8時ごろ、2機の輸送機が飛び立ちました。
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■退避用に自衛隊派遣も…■退避用に自衛隊派遣も…
現在、レバノンには日本人約50人が滞在しています。そのうち2人は、3日午後、政府手配のチャーター船でキプロスまで脱出したと外務省が明らかにしました。ただ、在留邦人の中には、侵攻が行われている南部に暮らしている人もいて、避難は容易でありません。
約1週間前に日本大使館から退避についての最初の連絡がきたという女性。
レバノン南部在住の日本人
「それが、もう、きのうのきょうというような急な話だったんで、とてもじゃないが、道もふさがれ、ベイルートには行けないと言った。ベイルートに行くにしても大変。いつも通る道が爆撃されているので」
政府関係者によりますと、4日にも自衛隊機に大使館関係者など20人程度を乗せて、現地を発つ見通しだといいます。
ただ、女性は、退避をあきらめたといいます。
レバノン南部在住の日本人
「自衛隊機がベイルートのハリーリ空港に来るので、それで退避できたらしてくださいということだが、私たちがベイルート・飛行場まで行き、そこから自衛隊機に乗って、ヨルダンのアンマンに連れて行ってくれる、それだけ。日本までは連れて行かない。要は安全な地帯に、ただ移動させるだけ。退避のことは、私は考えていない」
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■イランの核施設攻撃も“検討”か■イランの核施設攻撃も“検討”か
大規模攻撃を仕掛けたイランに対し、イスラエルがどのような報復措置に出るのか。
各国のメディアがこんなことを報じています。
イスラエルメディア『ワイネット』
「イスラエルは、イランの核施設への攻撃を検討している」
米ウォール・ストリート・ジャーナル
「アラブ諸国を通じ、イスラエルはイランにメッセージを送っていた。イスラエル領内への攻撃には、その大小にかかわらず対応し、『イランの核施設や石油施設を“直接攻撃する”』と言ったという」
核施設や石油施設への攻撃というケースもあり得ない話ではないといいます。攻撃の規模にもよりますが、本当に実行されれば、イランのレッドラインを確実に超えることになります。
4月に攻撃された際は、報復として、イランの核関連施設を守る防空システムに攻撃を仕掛けていました。“破壊しようと思えばできる”という姿勢を誇示したとみられています。
さすがに、アメリカもこれだけは許容できないようです。
アメリカ・バイデン大統領
「(Q.イランの核施設への攻撃を支持しますか)答えはノーです」
現在、イスラエルと敵対しているのは、『ガザ地区・ハマス』、『ヨルダン川西岸』、そして、北部との国境を面する『レバノン・ヒズボラ』。ほかにも、イエメンの親イラン武装組織『フーシ派』、シリアやイラクにいる『親イラン武装組織』、これらの後ろ盾となっている『イラン』など、いわゆる“7正面”で対立が続いています。
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■“戦闘長期継続”の理由は■“戦闘長期継続”の理由は
◆なぜ、このような状況でもイスラエルは攻撃を続けるのか。
イスラエル政治に詳しい防衛大学校・立山良司名誉教授に聞きました。
立山名誉教授は「背景には“建国の理念”がある」といいます。「第2次世界大戦時のホロコーストで、ユダヤ人は弱く、抵抗ができず、常に迫害の対象だった。“第二のホロコースト”を招くことだけは絶対に避けたい思いから、建国時に“強いユダヤ人”を掲げた。建国以来、外から見れば過剰ともいえる“力の行使”で抑止力を高め、自国を守れると考えた。ところが、去年10月7日、弱いと思っていたハマスに1200人以上が殺害、250人が人質に取られるという奇襲を許したことで、“屈辱や恐怖心”が芽生えた。これにより、イスラエルという国が掲げてきた“強さ”が揺らぎ、“喪失感”が一気に強まった。この1年の戦闘は、イスラエルが失った“自信と強さを取り戻す”ことが目的」と話します。
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■長引く戦闘に国民は…■長引く戦闘に国民は…
◆イスラエルで取材を続けている松本拓也記者に聞きます。
(Q.イスラエル国民は一連の戦闘をどう思っているのでしょうか)
松本拓也記者
「こちらは、エルサレムのなかでもユダヤ人が多く住むエリアです。こちらの新年にあたるということで、大通りに人通りがなく、閑散としています。
一連の戦闘について、取材をしますと、数年前に戦争で息子を亡くした方が話を聞かせてくれました。この方は「平和を望んでいるし、この戦争を支持しない」と話していました。ただ、圧倒的に多かったのは、ネタニヤフ政権への強い支持を表明する人たちです。ガザ地区での衝突に関しては「これはハマスが始めた戦争だ」と話す人がいたほか、「私たちは何百年もの間、被害者であり、しっかりとした自分たちの国を作るために、戦争は必要なんだ」という声が多く聞かれました。さらに、「戦争に勝つのはイスラエルだ」という考え方が、幼い子どもたちにも浸透しているというのが印象的でした。
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■“停戦の糸口”はどこに…■“停戦の糸口”はどこに…
◆停戦の糸口は、どこかにないのか。
イスラエルが使用している武器の多くは、アメリカから供与を受けたり、購入しているとされていますが、立山名誉教授は「唯一、策があるとすれば、アメリカが“完全に”武器供与を止めること。ただ、現実的には、アメリカ自身がハマス・ヒズボラを敵視しているため、残念ながら、止める術はない」と話します。
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