コロナ禍も終わり、在留外国人数が右肩上がりに増えていく中で、やや特殊な位置付けにあるのは韓国・朝鮮人だ。2023年6月末時点の出入国在留管理庁の統計によれば、韓国・朝鮮人の合計在留者数は、国籍・地域別で中国、ベトナムに次ぐ3位で43万6570人だが、近年は減少し続けている。2013年6月末時点では統計上52万6578人であったところ、そこから10年で2割弱も減っているのである。
内訳も特殊だ。在留資格別に見ると、その半数以上を「特別永住者」が占めている。この特別永住者とは、第二次世界大戦の終戦前から引き続き日本に在留し、サンフランシスコ講和条約の発効に際して日本国籍を離脱した者とその子孫が主な対象となっており、いわゆる在日コリアンの多くは、この在留資格で日本に在留している。
日本に在留する外国人は十人十色で、国・地域別にさまざまな特徴があるものの、韓国・朝鮮人は最も歴史的に複雑な経緯を有するといっても良いだろう。
日本に在留する韓国・朝鮮人の数が減少している原因の一つとして指摘されているのは、帰化や国際結婚に伴う国籍の変更である。留学や就職のために本国から日本へ渡航してくる例とは異なり、現代の在日コリアンの中には日本で生まれ育った人が多い。友人や同僚にも在日コリアンが複数いるが、韓国語が苦手で必死に勉強したという例も目にしたことがある。
日本に定住することを考えると、行政手続などの面でも日本国籍の方が良いと考える人も増えているのだろう。少子化も進行しており、朝鮮学校の児童・生徒数も減少の一途だというから、この傾向は今後も続くのかもしれない。
日常生活や仕事で接する中で、在日コリアンの方々の特殊性を意識させられることは少ない。実際に、弁護士として外国人からの依頼を比較的多く受けているが、在日コリアンからの依頼案件では、言語や文化、コミュニケーションの面で日本人からの案件以上に苦労するということはあまりない。
もちろん、本国との関係が複雑に絡むような内容の案件ではそうはいかず、より理解ある弁護士が対応すべきである。しかし、基本的には生まれたときから生活の本拠が日本の方からの依頼なので、韓国の戸籍を取り寄せたりする必要があるという相続案件の場合を除けば、韓国や朝鮮にバックグラウンドがない弁護士でも、一応案件に対応することができる。
ポップカルチャーや韓国料理といったソフトな部分から在日コリアンの文化に接しようと思えば、東京・新大久保や大阪・鶴橋に代表されるようなコリアンタウンに行けば良いだろう。
しかし、あえて意識的に触れようとしない限り、在日コリアンの深い部分を知る機会は実はそう多くない。在日コリアンの親しい友人弁護士に相談してみたところ、京都のウトロという地域に行ってみることを勧められた。
ウトロ地区は、第二次世界大戦中の京都飛行場の建設工事に従事していた朝鮮人の生活拠点が起源となっており、戦後、立ち退きに関する紛争や住環境問題などが長きにわたって問題になっていたエリアである。実際に訪れてみると、日本に暮らす移住者の苦悩や難しさについて考えさせられた。非常に複雑な問題であるが、いずれにせよ、意識的にこうした問題に目を向け、多角的な視点から考えることは有意義だと改めて感じた。
ちょうど10日には、韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)政権に対する中間評価と位置づけられる総選挙(定数300、任期4年)の投開票が行われたばかりだ。保守系与党「国民の力」は系列政党を含め108議席にとどまり、前回に続いて惨敗した。
隣国の政治状況は、日本にも大きな影響を与え、日本国内のニュースでも大々的に取り上げられる。韓国は切っても切れない関係の日本の隣人であり、在日コリアンは戦後の日本で「最古参」の移住者及びその子孫といえる。
とはいえ、これだけ日本に定住し社会に溶け込んでいる彼らを、ひとくくりにして日本人と対比する存在と位置付けることにも違和感を覚える。彼らの歴史や課題と向き合うことで、移住者の二世や三世というテーマについて学ぶことが多いだろう。(弁護士法人淀屋橋・山上合同 弁護士 増山健)
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