中国で、日本人学校の男子児童が殺害されるという、痛ましい事件がありました。波紋が広がっていますが、実は今日、日中の国交正常化から、ちょうど52年となります。ふたつの国のあり方を、改めて考えます。
中国で…日本人の小学生が殺害 SNSには「スパイを養成している」などのデマ
日本人学校の保護者(24日)
「(子どもに)外で日本語は大きい声で話さないようにしてねって話をしているし、私もなるべく中国語で会話するようにしています」
北京に住む男性。子どもが日本人学校に通っています。
深センで、日本人学校の10歳の男の子が刺されて死亡した事件を受け、今、現地の日本社会に不安が広がっています。
日本人学校の保護者
「ランドセルは背負わせないようにしている。ランドセルは日本の小学生の象徴でもあるかもしれないので、ターゲットになってしまう可能性がある」
怯えながら暮らす日本人学校の保護者。中国のSNSを見ると...
中国のSNSより
「日本人学校は授業中カーテンを閉めている。内部でどんな活動をしているか分からない」
「日本人学校でスパイを養成している」などといったデマが相次いでいるからです。
上川外務大臣は中国側に抗議。
上川陽子 外務大臣(23日)
「根拠のない悪質で反日的なSNSの投稿等は子どもたちの安全に直結し、絶対に容認できない」
中国外務省の報道官は...
中国外務省 林剣 報道官
「中国はこのような不幸なことが発生したことに遺憾の意と悲しみを表す」
哀悼と遺憾の意を表明しましたが、一方で、王毅外相は「日本側も政治化するのを避けるべきだ」と発言しています。
現在まで、事件の犯行動機など、容疑者の詳しい情報は開示されていません。
その背景を、中国社会に詳しい阿古教授は...
東京大学(現代中国研究)阿古智子教授
「経済的な情勢が悪化して言論を封じ込めているという状態が、人々に与えているストレスとか、そうしたことが明らかになるのを恐れているんじゃないかと。日本に対して敵対心を持ちやすい教育や、中国政府の政策にも関連しているかもしれない」
52年前の9月29日…日中国交正常化
今回の事件に際し、中国外務省は「反日教育はない」と明言。
しかし、事件が起きたのは93年前、日本が中国東北部を占領するきっかけとした柳条湖事件の日で、日本人の間では警戒する日とされていました。
振り返れば、今から52年前、日中の国交が正常化。
友好の機運は盛り上がりを見せ、両国の結びつきは深まります。
ところが、日中関係の転機となったのが2010年の中国漁船衝突。
さらに2012年には、民主党・野田政権で尖閣諸島が国有化されると、各地で反日デモが拡大。日中関係は過去最悪と言われました。
その後、中国は南シナ海などへの海洋進出など、急速に覇権主義を強めます。
8月も、軍用機や艦艇が日本の領空・領海に相次いで侵入。
一方で日本側も、25日、海上自衛隊の護衛艦に、初めて台湾海峡を通過させました。
中国外務省 林剣 報道官
「台湾問題は中国の主権と領土保全、中日関係の政治的基礎に関わる問題で、越えてはならないレッドラインだ」
「中国に良くない」印象の日本人9割超 一方、街中には両国をつなごうとする動きも
23年10月に発表された日中共同世論調査で、「相手国に対する印象」を尋ねたところ、中国に対して「良くない」印象を持つ日本人が92.2%と、調査開始以来2番目の高さに。
片や、日本に「良くない」印象を持つ中国人も6割を超えました。
そうした状況の中、市民の交流を絶やさず両国をつなごうとする動きも出てきています。
23年、東京・銀座にオープンした「単向街書店」。
中国で出版された本や日本の小説の中国語訳など約4000冊を扱っています。
週末には講演会などを開いて、両国の市民が触れ合う場を作っています。
中国の作家と共同で店を開いた松本さんは...
単向街書店 松本綾さん
「(日中関係は)何か問題があった時に交流をストップしたり、すごくもろい関係かなと。もうちょっと太い関係を築いていくためには、人間同士の直接の関わりと文化への理解が必要だと思う」
書店を訪れていた中国の人からも...
中国人の客
「私の子どもたちも日本の文化や歴史に興味を持っています。多くの中国人が日本を敵視しているわけではありません」
また、児童が亡くなった深センの日本人学校でも、今、多くの地元の人々が花をたむけ、その死を悼んでいます。
中国の人
「子どもは決して傷つけてはなりません」
「我が子が亡くなったような気持ちです。安らかに休んでほしい」
日中関係は、どこへ向かうのか。29日、日中国交正常化から52年を迎えます。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。