フィリピンのスラム街に住む、貧困層の子どもたちをファッションを通じて支援している日本人女性がいる。なぜ、ファッションをテーマに掲げるのか、彼女の活動を取材した。
■「スラム街の子どもたちに何かできないか」と思い…
胸を張ってステージを歩く この記事の写真今年2月、フィリピンのマニラで行われたファッションショー。胸を張ってステージを歩くのは、スラム街の子どもたちだ。
自らが着たいと思って、絵に描いたもの衣装は、子どもたち自らが着たいと思って、絵に描いたもの。
西側愛弓さん(29)2015年から開催されているこのショーを始めたのは、西側愛弓さん(29)だ。
西側さん「みんなに体験をギフトできるようなことをしたいなと思った時に、ファッションショーだと全員が主役になれる企画だなと思って」
子どもたちが自分で考えた衣装を着てステージを歩く…。西側さんは、この体験を通して自分の可能性や自信を手にし、「将来の夢」を描いてほしいと考えている。
大学時代の西側さん子どものころから洋服が好きだった西側さん。大学時代には、世界のファッションを見るためにアルバイト代をため、15カ国を旅したという。その旅の中で衝撃を受けたのが、ストリートチルドレンの存在だった。
ストリートチルドレンの存在に衝撃を受けた 西側さん「洋服を着られない、ボロボロの服しか着られない子たちが、こんなにいるんだと思ったのが、すごくショックで。当時、フィリピンのマニラがアジアの中でもストリートチルドレンが多い都市だと知って、何かここでやりたいなっていうのを直感的に思って、それで活動を始めた」
フィリピンは、急速な経済成長により貧富の差が深刻だ。都市部では、立ち並ぶ高層ビルの足元にスラム街が広がり、24万人以上のストリートチルドレンが暮らしているとされている。
大学3年生だった西側さんがひらめいたのが、ファッションショーだった「スラム街の子どもたちに何かできないか」。当時大学3年生だった西側さんがひらめいたのが、ファッションショーだった。しかし…。
西側さん「現地に知り合いがいたわけでも、フィリピンとの関係も一切なかった」
西側さんは、まず現地のNPOや企業を調べることから始めたという。
100カ所以上に電話をし、思いをつづった企画書を送ると、その熱意に賛同し、協力してくれる団体や企業が現れた。
それからおよそ10年。延べ300人近いスラム街の子どもが「夢のステージ」に上がった。
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■ファッションに関する技術を教える…学校を開校した理由■ファッションに関する技術を教える…学校を開校した理由
夢を描くだけでなく、実現に向けて努力できる環境が必要と考えるようにだが、ファッションショーを開催していくうちに、西側さんはある思いを強く感じるようになった。
西側さん「夢に対して努力できる環境がフェアじゃない。教育と雇用を作っていくということが大事だなと思って」 「COxCO Lab(ココラボ)」を設立
夢を描くだけでなく、実現に向けて努力できる環境が必要。そんな思いから作ったのが、デザインや縫製などファッションに関する技術を教える学校「COxCO Lab(ココラボ)」だ。
企業などの協力を得て、去年2月、マニラに開校。現在は、スラム街に暮らす16歳以上の男女14人が通う。なんと、すべての授業が無償だ。
生徒の就職と自立を支援講師は、現地の大学教員や縫製工場で働いていた人たちで、技術だけではなくビジネスマナーや性教育の授業も行われている。生徒の就職と自立を支援するのが目的だ。
その第一歩として生徒たちが一から手掛けた商品が、6月に初めて日本にやってきた。販売するのは、期間限定のショップだ。売り上げの一部は、学校の運営資金にもなっている。
来店客とフィリピンの生徒がオンラインで交流さらに、来店客とフィリピンの生徒がオンラインでの交流もした。
COxCO Lab生徒「ここで夢をかなえることができた、魔法みたい」
商品に魅力を感じて、購入した人は…。
西側さんの活動を応援する人「自分の子どもたちに、西側さんみたいな先輩がいて、こういう活動をしていることを感じてもらえたら良いなと思います」 ワンピースを購入した客
「思いを形にするのが、実際に商品を身に着けて、その思いが伝わっているのは、すごく感じます」 生徒が作った商品には直筆のサインが入っている
作り手の存在を感じてほしいと、生徒が作った商品には直筆のサインが入っている。
西側さん「みんな少しずつできることも増えて、(商品が)店頭に並ぶのはすごく感慨深かった」 学校の1期生の卒業制作
学校の1期生の卒業制作には、「ファッションは夢見ること ファッションは夢をつくる」という言葉があった。
ジャナさんこの作品を作った25歳のジャナさんは、幼少のころから家政婦として働き、10代で結婚・出産。子どもとの死別を乗り越えてきた。
現在は夫と息子(6)の3人暮らしだが、西側さんの学校に入るまでは、食べるものに困る生活だったという。
ジャナさん「それぞれが抱えている問題に一緒に向き合ってくれる。学校の仲間は、家族のような存在です」 学校に通うことが「生きる力」に
一定の技術を身につければ、生徒のうちから商品の製作に携わり、賃金を得ることもできる。学校に通うことが「生きる力」になっている。
ジャナさん「学校に入る前は自信もなく、人生に失望していたんです。今の自分には『夢』がある。西側さんに出会ったおかげです。私は変わることができた」
現在、彼女は縫製士としてこの学校に就職し、商品を製作しながら後輩に技術を伝えている。
西側さんの今の「夢」は、フィリピンでの実績を元に、他の国でも子どもたちの夢を実現につなげることだという。
西側さん「私の中で“夢を描く”というのは、人生の根幹にあるキーワード。誰よりも夢を描こうというのはずっと心がけています」
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■西側さんは「フィリピン以外の国でも」■西側さんは「フィリピン以外の国でも」
将来の夢が刺繍されている西側さんに、これまでに作られた商品を借りてきた。
この服の胸には、ファッションショーに参加した子どもたちの将来の夢、「お医者さんになりたい」と刺繍してある。
左袖には「先生になりたい」と夢が刺繍してあるそして、左袖には「先生になりたい」と夢が刺繍してある。
子どもたちが書いた夢の中から好きなものを選んで、自分が好きな場所に刺繍してもらうことができるそうだ。
刺繍によって値段は違うそうだが、この服の場合、1カ所刺繍を入れた場合、3万1900円から購入できるという。
少し高めだと思う人もいるかもしれないが、1点購入するごとに、学校の生徒やファッションショーに参加する子どもたちに「デッサンセット」が贈られるそうだ。
伊勢丹新宿店2階で新作アイテム7種類が販売される(10月24日〜29日)こうした商品は期間限定のショップで定期的に販売されている。直近では10月24日〜29日、伊勢丹新宿店2階で新作アイテム7種類が販売されるという。
西側さんは「フィリピン以外の国でも貧困層の子どもたちを支援する活動ができれば」と話している。
(「大下容子ワイド!スクランブル」2024年9月26日放送分より)
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