国連本部前で、未来サミットの開催に合わせた作品を制作するアーティスト=米ニューヨークで2024年9月21日、AP

 国連を中心とした多国間協力の再構築を掲げる「未来サミット」が22日、米ニューヨークの国連本部で開幕する。持続可能な開発に向けた資金調達、平和と安全、デジタル技術など広範なテーマを2日間にわたって話し合う。初日には、国連安全保障理事会の改革の必要性などを明記した成果文書「未来のための協定」と関連文書を採択する見通し。

 未来サミットの開催を呼びかけた国連のグテレス事務総長は「現在の国際的な課題は、私たちの解決能力を上回るスピードで進行している」と訴えてきた。

 米国、ロシア、中国など大国間の対立が影を落とす国連安保理は、ウクライナやパレスチナ自治区ガザ地区での戦争への対処で「機能不全」が指摘される。また、世界では核兵器の軍備拡大や拡散を巡る状況は悪化し、地球温暖化による異常気象が各地で牙をむく。

 2030年までに途上国の貧困問題に終止符を打つことなどを目指す国連の「持続可能な開発目標」(SDGs)では、支援の資金が慢性的に不足していることを背景に、進捗(しんちょく)の遅れが危機的な状況だ。

 グテレス氏は、現在の国連を含む多国間協力の枠組みは「時流に取り残され」制度疲労を起こしているとの見方を示し、今回のサミットを「21世紀にふさわしい形で再起動させる機会」と位置づけている。

 さまざまなレベルでの政策決定の過程に将来世代の利益を反映するため、若者の関与を促すことも今回のテーマの柱に据えた。人工知能(AI)をめぐる途上国と先進国との情報格差への対応などでは、具体的な進展が期待される。

 未来サミットは、各国首脳らが一堂に会する毎年1度の国連総会(加盟193カ国)の「ハイレベルウイーク」に合わせて開催。ウクライナのゼレンスキー大統領や、グローバルサウス(新興・途上国)の代表格であるインドのモディ首相、ブラジルのルラ大統領などが登壇し、訪米中の岸田文雄首相も演説する。

 一方で、米露中など安保理の常任理事国5カ国は首脳の出席を見送っており、加盟国には温度差もみられる。【ニューヨーク八田浩輔、中村聡也】

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