いまや私たちの暮らしに深く浸透したSNS。ネット上で、自由に意見を表明できる一方で、投稿が、大きな社会問題となるケースも出ています。
「大量の移民が国を破壊する」ドイツ極右政党「AfD」SNSで“移民排斥”を主張 イギリスでも…
移民らしき少年「おい、このジャガイモ野郎、金をくれ!」
ナレーション「我々の若者を守ろう」
白人の少年が、アフリカ系や中東系の移民に、追いかけられているようなアニメ。
こういった動画をSNSで公開したのは、ドイツの極右政党「AfD=ドイツのための選択肢」です。
「大量の移民が国を破壊する」「強制送還を」AfDはSNSを使って、移民排斥を訴えます。
8月、ドイツ国内で3人が刺殺される事件が発生し、容疑者の1人がシリア難民だと明らかになると、AfDの青年組織は早速、「国民が第一」との横断幕を掲げてデモを実施。
そのAfDは6月のEU議会選挙では、若者の得票率が大きく上昇。最近の州議会選挙で第1党に躍進した州もあります。
そうした状況に、政府も不法移民対策を強化。16日、隣接するすべての国との間で、国境審査の導入に踏み切ったのです。
移民排斥を掲げる極右政党の台頭の背景を、国際政治に詳しい五野井教授は…
五野井郁夫・高千穂大学教授
「AfDはTikTokとインスタグラムのショート動画を使って、外国人差別という、どぎついコンテンツであったとしても、アニメやポップな動画に仕立てることで(若者に)浸透させる。『自分たちの仕事のパイを移民や難民が奪っている』というような焚き付け方を極右政党がしている」
そして、こうしたSNSで虚偽の情報が拡散され、社会を揺るがすケースが、ここ最近多く見られます。
7月、イギリス国内で、子ども向けダンス教室に男が押し入り、3人の子どもがナイフで刺され亡くなる事件がおきます。
逮捕されたのは、イギリスで生まれ育ったアフリカ系の少年。当初、警察が容疑者の詳細を明らかにしていない段階で、ネット上で「少年はイスラム教徒」「ボートで入国した移民」といったニセ情報が拡散。
これに右派政党の党首も、少年の身元を巡って、SNSに不安を煽る投稿を行います。
リフォームUK ファラージ党首(7月30日)
「真実が隠されているのではないか、と疑っている」
事件翌日には、移民へのヘイトデモが起き、イスラム教のモスクの一部を破壊…
暴動はロンドンをはじめ、イギリス全土に飛び火し、暴徒化した市民400人以上が逮捕される事態に発展したのです。
「息子の死を政治的な道具として利用することは、非難されるべき」大統領選でもフェイク拡散
そして、先日のアメリカ大統領選のテレビ討論でも…
トランプ氏(9月10日 ペンシルベニア州)
「(オハイオ州)スプリングフィールドでは不法移民が犬や猫を食べている不法移民は住民のペットを食べている」
これは、市当局が否定し誤りとされる情報ですが、共和党の副大統領候補・バンス氏や、トランプ氏を支持するイーロン・マスク氏まで、同様の投稿を行い、SNSで拡散。
さらに「移民が少年を殺した」とのショッキングな投稿まで。
トランプ陣営のXアカウント「トランプ・ウォールーム」。そこには「11歳の少年が、ハリス氏が入国させたハイチ移民に通学途中に殺された」とあります。
しかし少年の父親は「息子は移民が起こした交通事故で亡くなったのであり、殺された訳ではない」とトランプ陣営を非難したのです。
少年の父親(12日)
「誤解のないように言っておきますが、息子は殺されたのではありません。息子を政治的な道具として利用することは、非難されるべきだ」
旧ツイッターに関するアメリカ・マサチューセッツ工科大学の研究チーム(2018年)の研究では「偽ニュースは事実よりも20倍のスピードで拡散する」などの結果も出ています。
いまやSNSが政治に悪用される危険性は、これまでになく高まっていると、五野井さんは警鐘を鳴らします。
五野井郁夫・高千穂大学教授
「TikTokのユーザーは現在16億人、インスタグラムは今20億人の人々が使っている。その中で、デマであったり、フェイクニュースであったとしても、とにかく支持者が拡大できればいい、自分たちの勢力の主張を拡大したいというのは、ヨーロッパやアメリカに限りません。日本でも現実的には起こりうることだと思います」
現代社会に欠かせなくなったSNS。その功罪が改めて問われています。
(「サンデーモーニング」2024年9月22日放送より)
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