がんの治療をしている英国のキャサリン皇太子妃(42)は9日、「化学療法」の段階を終えたことをSNS(ネット交流サービス)に投稿した動画で公表した。がんの種類や進行度は明らかにしていないが、「完全回復への道のりは遠い」とも話し、治療は今後も続く。
だが今回、英国のマスコミは総じて抑制的で、病状を詳細に伝えていない。
英メディアはこれまで、1997年に事故死した故ダイアナ元皇太子妃や、その夫だったチャールズ皇太子(現国王)の不倫疑惑や性的な話題を盛んに報じてきた歴史がある。
著名人のプライベート写真などを撮影するカメラマンの「パパラッチ」(イタリア語で「うるさい虫」の意味)で知られる英メディアが、なぜ今回は対応が違うのか。
英国を代表する大衆紙サンの元王室担当記者で、現在はキャサリン妃の伝記作家も務めるロバート・ジョブソン氏は10日に記者会見し、「四半世紀前と今とでは時代が変わった」と述べた。
「私は以前、サン紙に勤めていたので事情を知っているが、昔はまるで(米国の)西部開拓時代のように、皆やりたい放題だった」
ジョブソン氏はそう振り返ったうえで、現在は特に「医療や健康」といった個人の生命に関するプライバシーについては報道する側も慎重になってきたと指摘した。そして、「彼女の生き方を尊重しなくてはならない。これまでのところ、英国内外のメディアは信じられないほど控えめだ」と話した。
一方、キャサリン妃が3月にがんを公表した際、英国で話題になったのは家族への対応だった。
英紙タイムズの王室専門記者のケイト・マンジー氏は3月、キャサリン妃は「世界にどう伝えるかより、子供たちにどう伝えるか」に悩んでいたと同紙に記した。その後、英国では「親は自分のがんを子供にどう伝えるか」についてさまざまな意見が飛び交っている。
キャサリン妃は1月に腹部の手術で入院。その後の検査でがんが判明し、3月22日に自ら公表に踏み切った。その後は入院せず、化学療法を受けていた。【ロンドン篠田航一】
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