中国・深センで18日、登校中に男に刺された日本人学校の男子児童(10)が19日未明に亡くなりました。中国の日本人社会に動揺が広がっています。中国側は犯行の動機や背景についての言及を避けていて、日本政府は真相を究明し、日本側と情報を共有してほしいと求めています。
■“最も開かれた都市”で衝撃広がる
深セン日本人学校 塚本昌夫校長
「動物が好きで命を大切にするお子さん。動物が好きで大切に育てている。周りからもとても友達がいるお子さんだと」
児童が通っていた日本人学校は、今週末まで休校が決まっています。
中国の改革開放政策により“最も開かれた都市”と言われた深セン市。事件から1日経ち、影響は広がっています。
香港の対岸に位置する深センは、40年ほど前までは小さな漁村でしたが、改革開放により急速に発展。今や“ハードウエアのシリコンバレー”とも呼ばれています。通信機器大手『ファーウェイ』、電気自動車を展開する『BYD』、ドローンなどのメーカー『DJI』といった企業の本社があります。進出している日本企業も多く、3600人ほどが住んでいます。
献花に来た人
「改革開放の当初、日本人が率先して工場を作りました。私も1980年代、深センに来て多くの日本人とビジネスをしてきました」
北京に留学後、5年前から深センで働く日本人男性が話を聞かせてくれました。
深セン在住の日本人
「元々留学している時も、北京、中央政府から最も離れている発展した都市が広州、深センだと言われていたので。割と思想的にリベラルな方が多くて、しかも政治的な悪口を言う人たちも結構いるところ。2019年の深センは全く違う世界でしたね。自由開放的なところで」
現在、妊娠中の妻がいますが、今回の事件で生活の不安が大きくなりました。
深セン在住の日本人
「昔から深センで仲がいい人たちとのグループでは、子育てをする時にこのままだと怖いと。日本に移住して子育てしたほうがいいんじゃないかという声は実際に上がっていますね。今回割と決定打になりやすい事件かなと」
最近は深センでも反日活動が活発になってきたといいます。
深セン在住の日本人
「日本人で集まること自体がリスクなんじゃないかと。最近いきすぎた愛国主義者のコンテンツが増えているのを感じる。そういったコンテンツこそ規制すべきだなと。これは深センに限らずというのは感じますね」
■容疑者の素性・動機など説明なく
男子児童が刺されたのは腹部ということですが、それ以上の詳しい状況や容疑者の動機など、18日に中国側からの報告はありませんでした。
岸田総理
「極めて卑劣な犯行であり、重大かつ深刻な事案であると受け止めています。ご家族のご心痛察して余りあるものがあります。犯行からすでに1日以上が経っていることから、一刻も早い説明を強く求めるよう指示をしたところであります」
中国側の捜査はどの程度、進んだのでしょうか。19日の定例会見では…。
中国外務省 林剣報道官
「中国はこのような不幸な事件が起きたことを遺憾に思います。男児が襲撃を受けた後、直ちに病院に搬送、広東省の医学専門家は全力で治療にあたりました。現在、事件はさらに調査中です。中国の関連部門は法律に基づいて対処していきます」
捜査中として、容疑者については国籍も含め一切明らかにしませんでした。
中国外務省 林剣報道官
「これまで把握した情報から、これは個別な案件。類似な事件はどの国でも起こり得る。我々は日本人を含む各国の人々が観光、勉強、貿易、生活のため中国を訪れることを歓迎しています。引き続き有効な措置を取り、外国人の安全を保証します」
しかし、安心できる状態ではありません。
■影響早くも 企業など緊急会合
事件を受け、北京では大使館や日本企業、日本人学校などの関係者による緊急会合が開かれました。
中国日本商会 本間哲朗会長
「在中日本企業にとって従業員等、家族の安心と安全の確保は、我々が中国で事業活動を継続するための基本中の基本。会員企業は一時帰国、もしくはカウンセリングによる心のケア等の活動をすでに始めているが、より良い対処の仕方を考えていきたい」
早くも日本企業の活動にも影響が出始めています。19日に中国外務省と電話会談したという金杉大使は…。
金杉憲治駐中国大使
「一番知りたいのは日本人が狙われていたのか。日本人学校が狙われていたのか。そこを知りたいと思っているので、引き続き中国側のしっかりとした説明を求めていきたい」
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