ポケベルが一斉爆発して死者が出たレバノンで、今度は、トランシーバーなどの通信機器が次々と爆発しました。
前日に起きたポケベル爆発による犠牲者の葬儀が行われていた最中のことです。参列者は騒然となりました。
今回は、レバノン全土で、数十台のトランシーバーが爆発しました。数はそれほど多くなかったものの、中に仕込める爆薬がポケベルよりも多いため、火災を引き起こすほどの被害が起きているようです。
今回の爆発で、少なくとも25人が死亡。負傷者は600人以上に上っています。
中東のメディアでは、無線機器だけでなく、太陽光発電システムなど、あらゆる電子機器が爆発したとも報じられています。
電器店店主
「きょうの事件は予想外だった。また爆発が繰り返されるとは。店の機器は100%安全だと思うが、念のため撤去した。敵はひきょうだ」
LAタイムズ ブロス中東支局長
「レバノンの人々は、通信機器を恐れるようになった。『ルーターの電源を切ろう』『通信機器のバッテリーを外そう』『iPhoneが狙われている」といった噂が出回るなど、身の回りの通信機器に不安を感じている」
ポケベルに続き、今回のトランシーバー。ともに、イスラエルの諜報機関の仕業に違いないと、ヒズボラは非難しています。
大量のトランシーバーが爆発した今回、残骸の画像から、日本の無線機メーカー・アイコム製のものではないかとの指摘があがりました。
アイコムは取材に応じ、当該の製品は、10年前に生産を終了しているため、偽造品である可能性があるとしています。
アメリカのメディアによりますと、爆発したトランシーバーをヒズボラが購入したのは、今年の春ごろだといいます。
さらに、中東地域でアイコム製品の販売を手掛ける企業に残骸の画像を見てもらったところ、こんな証言も得られました。
アイコム代理店 ヤセル・スレイマン代表
「無線機の形から見て偽物でしょう。ここにシリアルナンバーとアイコムのホログラムもありません。日本から発送されるすべての無線機にはシリアルナンバーがついています。だから、これは偽物だといえます」
ヒズボラがトランシーバーを購入したのは、ポケベルと同じころだといわれています。
ポケベルの製造を手掛けていたハンガリーの企業をめぐっては、イスラエルが破壊工作を行うためのフロント企業だったという疑いが濃くなってきています。
ニューヨーク・タイムズ(18日付)
「イスラエルは、ヒズボラがポケベル使用を決める前から、ポケベル製造のグローバル企業を装うダミー企業を立ち上げていた。その実態は、イスラエルのフロント企業の一つだった。今回のポケベルは、通常とは別の製造ラインで作られ、バッテリーには少量の爆薬・ペンスリットが入れられた。イスラエルの諜報員いわく、ポケベルは『機が熟したときに押す“ボタン”』だった。その時が来たのが、今週だったようだ」
2日に渡ってヒズボラの通信機を標的にした目的は、何だったのでしょうか。
イスラエル側は、関与についてコメントしていませんが、ガラント国防相が気になる発言をしています。
イスラエル・ガラント国防相(18日)
「いま、北部の重要性が高まっています。私たちは軍事資源を北部に転じつつあるということです。この戦争における“新たな局面”を迎えているのです」
北部、つまりレバノンとの国境に兵力を集中させることが「新たな局面」だと述べました。
この発言と、一連の通信機の爆発。専門家は、この2つから導き出されるイスラエル側の狙いがあるといいます。
元CIA工作員 ロバート・ベア氏
「レバノンへの侵攻を示唆しているのではないか。イスラエルは、ヒズボラに戦争を仕掛ける気で、部隊間での連絡を絶つことは戦術に欠かせません。トランシーバーなどの無線機は、ヒズボラの主な通信手段です。遮断されれば、ヒズボラは戦闘員の通信手段を失います。イスラエルは、すでに“軸足を移す”と北に動いています。ヒズボラを軍事的脅威として本気で取り除くなら、地上から侵攻することが必須です。前回、侵攻したのは2006年で、ベイルートを壊滅状態にしました。また、やるつもりでしょう」
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