移民とみられる人々が到着した英南部ドーバーの港=2024年4月23日、ロイター

 英国に不法入国した難民申請者らをアフリカ中部ルワンダに移送する法案が23日未明、英議会上院を通過した。既に下院でも可決されており、今後、チャールズ国王の裁可を経て正式な法律となる。年内にも実施される総選挙を前に、保守党のスナク政権は「移民の流入阻止」という実績をアピールし、支持率回復につなげたい考えだ。

 この計画はジョンソン政権時代の2022年4月に発表された。不法移民が英国の財政を圧迫するとして、ルワンダへの資金援助と引き換えに人々を受け入れてもらう内容だ。ジョンソン首相(当時)はルワンダを選んだ理由について、「安全で移民を受け入れてきた実績がある」と説明したが、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は「人々を商品のように扱うべきでない」と批判していた。

ルワンダのカガメ大統領(左)との会談に臨むスナク英首相=ロンドンで2024年4月9日、ロイター

 ルワンダではカガメ政権による人権弾圧も指摘されており、英最高裁は23年11月、「移送された人々がルワンダで不当な扱いを受けるリスクがある」として、移送は違法と判断した。これに対しスナク政権は、ルワンダを「安全な国」と定義して移送を可能にする新たな法案を提出し、今年1月に法案は下院を通過した。

 スナク首相は法案の上院通過に先立つ22日、ルワンダへの第1便は「10~12週以内に」離陸すると発表し、複数の民間チャーター機を確保したことを明らかにした。

 スナク氏が移送を急ぐ背景には、保守党の支持率低迷がある。英調査会社ユーガブの最近の世論調査(16~17日実施)によると、保守党の支持率は21%で、最大野党・労働党の44%に大差をつけられている。スナク氏には、有権者に関心の高い移民対策で実績を作る思惑もあるとみられる。

移民とみられる人々が到着した英南部ドーバーの港=2024年4月23日、ロイター

 紛争や貧困から逃れるため、中東やアフリカ、アジアから英国を目指す不法移民は後を絶たない。英BBC放送などによると、英仏海峡をボートで渡り英国に到着した人々は18年以降、計約12万人に上っている。国籍はアフガニスタンやイラン、エリトリアなどが多いという。【ロンドン篠田航一】

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