米共和党のJ・D・バンス氏=秋山信一撮影

 トランプ前米大統領(共和党)の暗殺未遂とみられる事件を巡って、民主、共和両党が「攻撃的なレトリックを止めろ」と言い合っている。11月の大統領選が迫って対立が激化し、政治的暴力を誘発しやすい状況が続いているが、緊張が緩和する気配はない。

 「保守とリベラルには大きな違いがある。過去2カ月間に誰も(民主党の)カマラ・ハリス(副大統領)を殺そうとしなかったが、2人がドナルド・トランプを殺そうとした」。共和党副大統領候補のバンス連邦上院議員は16日の集会でこう強調し、「左派がレトリックのトーンを下げる必要があるという証拠だ」と訴えた。

 トランプ氏も16日、自身を「民主主義に対する脅威」と位置づけるバイデン大統領やハリス氏の「レトリック」が事件を招いていると批判した。

 一方、ホワイトハウスのジャンピエール報道官は17日の記者会見で、バンス氏の発言について「その種のレトリックこそ危険だ」と反論した。

 トランプ氏を「民主主義の脅威だ」とするのは、2021年にトランプ氏の支持者らが連邦議会を襲撃した事件で実証されていると主張。民主党のペロシ元下院議長の夫が22年にペロシ氏を敵視する暴漢に襲撃された事件を例示して、「暴力的なレトリックが激しすぎる。トーンダウンすべきだ」と訴えた。

 ハリス氏は17日にトランプ氏に電話し、「米国に政治的暴力の余地はない」と伝えた。バイデン氏も16日に電話して、警護強化について話したという。【ワシントン秋山信一】

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