イスラエル軍に迎撃されるヒズボラが発射したロケット弾=イスラエル北部で2024年9月16日、ロイター

 イスラエルと戦闘を続けているレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの戦闘員らが保有している無線通信機が17日、レバノン各地で一斉に爆発した。レバノン保健相などによると、ヒズボラの戦闘員を含む少なくとも8人が死亡し、2750人以上が負傷したと明らかにした。このうち200人は重傷という。無線機は日本で「ポケットベル」と呼ばれていたタイプで、イスラエルによるサイバー攻撃だった可能性がある。

 事実であれば、多数の通信機器をハッキングして爆発させる手法は極めて異例だ。イスラエルは関与についてコメントしていないが、ヒズボラは声明で「イスラエルの犯罪的な攻撃」だと主張し、「報いを受けるだろう」と強調した。

 イランメディアはこの攻撃でイランの駐レバノン大使が軽傷を負い、病院に運ばれたと報じた。イランはヒズボラを支援しており、イランとイスラエルの間の緊張がさらに高まる可能性がある。

 報道によると、一連の爆発は午後3時45分(日本時間午後9時45分)ごろから、首都ベイルート南部を中心にレバノン各地で発生した。シリアでも同様の爆発があったとの情報もある。ソーシャルメディアには、市場や店舗などで小規模な爆発が起き、所有者が倒れる場面を映した複数の動画が投稿された。ロイターの記者はベイルート南部で、ヒズボラのメンバー少なくとも10人が負傷したのを確認したという。

 中東の衛星テレビ「アルジャジーラ」によると、ヒズボラの指導者ナスララ師は数カ月前、イスラエルによるサイバー攻撃などを警戒し、戦闘員に対してスマートフォンの使用を控えるよう求めており、この通信機器が主要な連絡手段となっていた。ナスララ師に被害はなかったと報じられている。

 ヒズボラは昨年10月、パレスチナ自治区ガザ地区でイスラム組織ハマスとイスラエルの戦闘が始まって以来、イスラエルと断続的に交戦を続けている。イスラエル首相府は17日、ヒズボラとの戦闘で避難生活が続く北部の住民の「安全な帰還」を戦争の目的に加えたと発表し、ヒズボラへの攻勢を強める姿勢を示していた。【エルサレム金子淳】

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