アメリカのエンターテインメントで日本の『時代劇』がかつてない快挙です。テレビ界のアカデミー賞と言われるエミー賞で、俳優の真田広之さんが主演・プロデュースを務める『SHOGUN 将軍』が、作品賞など主要4部門を含む、18部門を受賞しました。
■米ドラマ賞を“時代劇”が席巻
エミー賞はテレビ番組などを称える賞ですが、映画のアカデミー賞、演劇のトニー賞、音楽のグラミー賞に相当する、文化賞の一つです。
男性
「真田さんはお気に入りの俳優です。SHOGUN以外もいろいろ観ています。本物の日本人俳優ですね」
1949年から続くエミー賞で今回、新たな時代を切り開いたのは日本が舞台の時代劇、そして日本人の出演者やスタッフたちでした。ノミネートは主要部門を含め22に上り、エミー賞創設以来過去最多となる18部門を受賞。9人が日本人という快挙でした。
このドラマについてプロデューサーでもある真田広之さんは「こだわったのはオーセンティック=正統」だと話しています。
主演男優賞 真田広之さん
「私が演じた役は、歴史上実在する家康という戦国の世を終わらせた人物です。皆さんが思うSAMURAIとは違います。(Q.ハリウッドがこれまで描いてきたSAMURAIですね)今回はオーセンティックにこだわりました」
『SHOGUN』は関ケ原の戦いの半年前を題材にしたアメリカの小説が原作です。日本に漂着し徳川家康の家臣となったイギリス人を中心に物語は進んでいきます。ディズニーによるオリジナル配信ドラマで全部で10話。その製作費は1話あたり数十億円と言われています。
■出演者語る 衝撃の“舞台裏”
織田信長がモデルの役で出演した尾崎英二郎さん。初めて訪れた撮影現場は衝撃的だったといいます。
“信長”役で出演 尾崎英二郎さん
「実際にセットに入った時は、大坂城の大広間とか、ふすま絵とか、つくりが素晴らしい。ハリウッドが本気を出すと、ここまでのつくりになるんだと圧倒された。あとは衣装。特にメインキャストの衣装は本当に丹念につくられている。見事なデザイン。びっくりした」
ビジュアルだけでなく時代背景や世界観も。
“信長”役で出演 尾崎英二郎さん
「これまでの時代劇、戦国の物語であれば、合戦がメインだったり、チャンバラが必ずあって、男中心にどうしてもなる。この作品では戦国の不条理、理不尽さの中で耐えてきた、男性だけでなく、女性たちがものすごく生き生きと描かれていて、抑圧された社会の制度の中で戦う女性とか、階級が下の者とか、世界の方が見ても理解できる普遍的なものだから」
■“あえて日本語で”常識覆す
人間ドラマが中心になると、重要になってくるのは言葉です。その言葉の部分で『SHOGUN』は画期的でした。それは真田広之さんの授賞式でのあいさつにも表れていました。英語ではなくあえて日本語で行ったのです。
主演男優賞 真田広之さん
「手短に日本語で話させてください。通訳してくれる?これまで時代劇を継承して支えてきてくださった全ての方々、監督や諸先生方に心より御礼を申し上げます。あなた方から受け継いだ情熱と夢は、海を渡り国境を越えました」
これまでもハリウッドで日本の時代劇が作られたことはありましたが、台詞は英語が中心でした。ハリウッドでは台詞は英語だけか、英語の吹き替えをするのが半ば常識だったからです。しかし今回、台詞の7割は日本語です。
最初の脚本段階では英語、それを日本語に直訳し、別の脚本家が時代劇の言い回しに書き換える、さらに英訳し直して字幕をつける、という手間のかけかたでした。その理由を真田広之さんはこのように説明しています。
主演男優賞 真田広之さん
「いかにストーリーやキャラクターに入り込んでいただくか、いかにオーセンティックに作れて邪魔をするものがない、集中できる、そういうものを作るのが大事というところから始まったので」
総指揮をとったジャスティン・マークスさんは…。
エグゼクティブ・プロデューサー ジャスティン・マークス氏
「当初、ハリウッドがこの数十年、日本を描く時『どんな間違いを犯したか』ずっと真田さんと議論しました。互いを尊重する“言語”。ハリウッドと日本が力を合わせた時に、観た人をあっと言わせる方法を模索しました」
また、このようにも話しています。
Town&Country紙から
「役に最も適した俳優ではなく、英語が話せる日本人の中で最適な俳優を選ぶことになってしまう」
今回、日本の錚々たる俳優陣が脇を固めました。英語という枠を取り払い、字幕を読ませることに挑戦したからこそ、可能だったキャスティングです。
エンタメの世界では新たな潮流が始まっているのかもしれません。
主演男優賞 真田広之さん
「日本語のセリフで字幕が出て、それを興味深くみていただき、理解していただき、この結果につながったということは、今後、日本のみならず全ての外国語作品、クルー、俳優陣への可能性が広がったという気がするのです。世界的に素晴らしいリアクションを観客からいただいたので、じゃあ次(シーズン2)もやろうかという話になった」
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