「再び大統領になるべき人物だった。しかし、神が彼を連れて行った」
南米ペルーのアルベルト・フジモリ元大統領が死去したことを受け11日、首都リマの自宅前には支持者が集まった。その一人はロイター通信に対し、こう死を悼んだ。
フジモリ氏を巡っては、破綻寸前のペルー経済を立て直した手腕を評価する声がある一方、「独裁者」との批判も絶えず、毀誉褒貶(きよほうへん)が激しい。
そのレガシー(政治的遺産)は今もペルー社会を分断させている。
フジモリ氏は最近まで政界復帰を目指して活動していた。大統領在任中の二つの市民虐殺事件で有罪評決を受け、収監されていたが、昨年12月に高齢や健康状態などを理由に釈放された。
その後、ウェブサイトを開設し、自らを「国の再建の柱となる遺産を残した指導者」とアピールし、SNS(ネット交流サービス)や動画投稿サイト「ユーチューブ」を使って過去の実績をアピールしていた。2026年までに予定される大統領選に出馬する意向も固めていた。
だが、フジモリ氏に対して、ペルー社会には憎しみに似た感情が渦巻く。一例が昨年、釈放された際の国民の反応だ。軍の特殊部隊によって殺害された市民の遺族は強く反発し、釈放前には抗議デモも起きた。
中道右派「フエルサ・ポプラル」の党首を務める長女ケイコ氏は、これまでに3回、大統領選に挑んだものの、フジモリ氏の「負の遺産」を払拭(ふっしょく)できず、いずれも敗北した。ケイコ氏は大統領選に絡んだ資金洗浄(マネーロンダリング)などの罪にも問われている。【ニューヨーク中村聡也】
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