フランスのマクロン大統領は、選出が難航していた新首相に、元外相で、英国の欧州連合(EU)離脱交渉で首席交渉官だったミシェル・バルニエ氏(73)を指名した。現在の第5共和制では最年長の首相となる。
フランスでは、大統領が首相の指名権を持つ。議会の不信任案で政治が停滞するのを防ぐため、これまで議会最大グループから首相を指名するのが慣例となってきた。だが、党派間の調整が難航し、まとまらなかった。このためマクロン氏は各政党の反発が比較的少なく、交渉力に定評のあるバルニエ氏を指名した。バルニエ氏は2022年大統領選に向け、中道右派「共和党」の党内候補として立候補したが、党内選挙で落選した。
6~7月の国民議会(下院、定数577)選でも争点の一つとなった移民政策を巡っては、バルニエ氏は移民に比較的厳格な立場で、極右政党「国民連合」にも配慮した人事となった。
国民議会選では、社会党、共産党、急進左派「不服従のフランス」(LFI)などで構成する左派連合が182議席でトップに立ったが、過半数には達しなかった。マクロン氏は自身と主義主張が正反対に近いLFIの政権入りに難色を示していた。
首相指名に向け、マクロン氏は8月末から各政党の代表者をエリゼ宮(大統領府)に招いて会談しており、9月2日にはオランド前社会党政権で首相を務めたカズヌーブ氏、共和党出身のベルトラン元労働相と面会した。政治家以外では、政府の諮問機関「経済社会環境評議会」(CESE)の議長を務めるティエリー・ボーデ氏(62)の起用も検討したが、国民連合が反対し、不調に終わった。【ブリュッセル宮川裕章】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。