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イスラム組織ハマスに拘束されていた人質6人が、ガザ地区で遺体となって発見されました。これを受け、イスラエル全土で過去最大規模の反政府デモが行われました。怒りの矛先が向かうネタニヤフ政権は今後どうなるのでしょうか。

■人質殺害で“最大規模”反政府デモ

テルアビブにあるベングリオン国際空港のでは、航空機の発着がほとんど止まり、多くの人たちが再開の時を待っていました。この状態になっているのは、イスラエル最大の労働組合がゼネラル・ストライキを呼び掛けたからです。

イスラエル国民
「ギリシャ行きの便が延期になりました。ストライキは支持します。全てのイスラエル国民が人質の帰還を望んでいるのです」

ゼネストは全国規模で行われるため、銀行も閉店。病院も一部しか稼働していません。

ストに参加中の外科医
「11カ月間も苦しんだ末に6人の人質が殺害されました。もう黙ってはいられません」

要求しているのは即時停戦です。発端はガザで囚われていた23〜40歳の人質6人が遺体で見つかったことでした。

イスラエル ネタニヤフ首相
「全国民の心が引き裂かれてしまう悲しい日となりました。全イスラエル国民と同様に、私は6人が残酷に殺害されたことに心の底からショックを受けています」

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■イスラエル系アメリカ人も犠牲に

■イスラエル系アメリカ人も犠牲に

人質の1人、イスラエル系アメリカ人のハーシュ・ゴールドバーグポリンさん(23)。停戦が合意されれば無事に戻るとされていました。それゆえに家族は至る所で声を上げ続けます。

ハーシュさんの父親(米民主党大会 先月21日)
「戦火の中東で直ちに緊張を解き、平穏をもたらす方法は、人質を連れ戻し、罪のないガザ市民の苦しみを終わらせることです」

ハーシュさんの母親(ガザ地区境界 先月29日)
「ハーシュ!ママだよ。きょうは328日目。皆ここにいる。あなたを取り戻すまで決して諦めない」

しかし、イスラエルが戦闘をやめることはなく、家族の願いも届きませんでした。

アメリカ バイデン大統領
「遺族への連絡が済むまで何も話せない。合意が近付いている。この戦争を終わらせるべきだ」

今回、遺体で見つかった6人の人質。銃で処刑されていた可能性が指摘されています。

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■停戦協議進まず 政権に反発

■停戦協議進まず 政権に反発

一方で、停戦協議でイスラエルが譲歩しなければ、こうした最悪の事態を招く予測もされていました。ネタニヤフ首相の独断が人質を死に追いやったと人々は考えています。

週末のイスラエル各地で行われた抗議デモには70万人が参加したとされ、去年の10月7日以降、最大となりました。昼夜問わず行われたデモ。黄色いリボンは人質や行方不明者の無事帰還を願うシンボルです。

イスラエルとハマスの大規模衝突から間もなく1年が経ちます。いまだ101人の人質が戻ってきていません。

デモ参加者
「人質や捕虜がどこにいようと手段を尽くすのが政府の原則ですが、ネタニヤフは極右連立を守るため、その原則を捨てようとしています」
「ネタニヤフは解決を委ねられましたが、彼は人質のことなど考えず国民を見捨てたのです」

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■間もなく1年…今も101人が人質か

■間もなく1年…今も101人が人質か

現地メディアなどによると、去年10月7日にハマスがイスラエルを襲撃した際、251人が拉致されました。これまでに117人が解放・救助され、37人の遺体が回収されたということです。

そのうち、今回確認された6人は、イスラエル系アメリカ人が1人、イスラエル人が5人です。

現在、ガザ地区には、その後に拉致された人も含めて101人が残されているとみられます。

人質解放や即時停戦を政府に求めるデモは、これまでに何度も行われましたが、今回のデモは去年10月以来、最大規模で、CNNによると各地で70万人が参加したとされます。

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■ネタニヤフ政権への影響は

■ネタニヤフ政権への影響は

中東での取材経験が長い、テレビ朝日の大平一郎外報部長に聞きました。

(Q.最大規模のデモで、流石にネタニヤフ政権にもダメージがあるのではないですか)

大平一郎外報部長
「デモの影響は少なくないが、ネタニヤフ首相は方針を変えることができない。史上最も右寄りとされるネタニヤフ政権は人質の救出ではなく、ハマス殲滅(せんめつ)を最優先とする強硬派が岩盤支持層だからだ」

(Q.ネタニヤフ首相は、今後も強硬派に向けた政策を続けるのでしょうか)

現地メディアの世論調査によると、去年10月に戦闘が始まった時よりも、今年7月のハマス最高幹部やヒズボラ幹部の殺害後には、低迷していた支持率が回復しています。

次期首相候補の1人、穏健派のガンツ前国防相とどちらが首相に適任かという調査で、去年10月はガンツ前国防相の方が支持率は高かったのですが、先月の調査ではネタニヤフ首相が上回りました。

大平一郎外報部長
「ネタニヤフ首相にとっては強硬策に“突っ走る”ことが政権の延命策。“名目上”は『ハマス殲滅』と共に『人質解放』を目標に掲げているが、今後も政権維持のために強硬策を優先させるのではないか」

大越健介キャスター
「ガザ地区では、蔓延が心配されているポリオのワクチン接種のため、地域を限定して一時的な停戦が行われています。一部とはいえ、こうした形で停戦ができるなら、この動きを広げていくことも可能ではないかという期待の声もありますが、ネタニヤフ首相の強硬姿勢を見ると、とても楽観的な見通しは持てないのが実情です」

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