ガザ地区に捕らわれている人質の解放を訴える市民ら=イスラエル中部テルアビブで2024年9月1日午後8時、松岡大地撮影
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 パレスチナ自治区ガザ地区での戦闘を巡り、イスラエル国内で1日、イスラム組織ハマスとの停戦合意や拉致された人質解放を求める大規模デモがあった。8月31日にガザで人質6人が遺体で見つかり、イスラエル国内ではネタニヤフ首相の停戦交渉の進め方に不満が高まっている。

 地元メディアによるとデモには約30万人が参加。イスラエル最大の労働組合のトップは2日、ストライキを呼びかけ、反発は大きなうねりとなっている。

 「戦争をやめろ」「(救えなかった)私たちを許してほしい」。1日、商都テルアビブの中心部には約30万人が集まり、人質の早期解放を求めた。

ガザ地区に捕らわれている人質の解放を訴える市民ら=イスラエル中部テルアビブで2024年9月1日、ガイ・グリーン撮影
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 自身もハマスに一時拘束され、夫がまだ人質のアビバ・シーゲルさん(63)は「ネタニヤフ氏が人質を見殺しにした」。ITエンジニアのオル・セラさん(46)は「最も大切なのは人質の生還だ。ネタニヤフ氏は選挙で負けることを恐れて戦争を続けている」と非難した。

 今回、遺体で見つかったのは、20~40代の男女6人。イスラエル軍が発見する直前に殺害されたとみられる。イスラエル紙ハーレツによると、6人のうち3人は、今回、停戦が成立すれば第1段階で解放される予定だった。

 反発の背景にはネタニヤフ政権が8月29日の閣議で、ガザとエジプトとの境界地帯に軍の駐留継続を決めたことがある。武器の密輸を防ぐ目的とされたが、ハマスは猛反発し、停戦交渉が停滞する原因になってきた。

 一方、ガラント国防相は「人質の命を犠牲にしてまで、駐留を優先させることは道義的に恥ずべきことだ」として、政権内で唯一決定に反対。人質の遺体発見後には「今すぐ、境界地帯の駐留の決定を撤回すべきだ」とX(ツイッター)に投稿した。

ガザ地区に捕らわれている人質の解放を訴える市民ら=イスラエル中部テルアビブで2024年9月1日、ガイ・グリーン撮影
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 これに対して、ネタニヤフ氏は「ハマスは交渉成立を望んでいない。ハマスを追いかけ、決着をつける」との声明を出し、ハマスの「壊滅」を優先させることを強調した。

 国民の間ではハマスとの戦闘より、人質交渉を優先すべきだという声が多数派になっている。地元民放が7月上旬に公表した世論調査では、ガザでの紛争において「最も重要なことは何か」との問いに対して、67%が人質の解放と答え、戦闘の継続は26%にとどまった。

 ただ今回の遺体発見前まで、ネタニヤフ氏の支持率は回復傾向にあった。イスラエル紙マーリブが8月9日に公表した世論調査では、政敵のガンツ前国防相とネタニヤフ氏の「どちらが首相に適任か」との問いに、ネタニヤフ氏が42%、ガンツ氏が40%で、昨年10月の戦闘開始後、初めてガンツ氏を上回った。

 30日公表の調査では再びガンツ氏が上回ったものの、ハマスの最高指導者がイランで暗殺され、イランが報復を宣言する中、安全保障上の緊張が追い風になった可能性がある。【エルサレム松岡大地】

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