ポリオの感染が確認された避難民の子ども=パレスチナ自治区ガザ地区中部で2024年8月27日、AP

 国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の清田明宏保健局長は30日、パレスチナ自治区ガザ地区で感染拡大が懸念されるポリオ(小児まひ)のワクチン接種が始まるのを前に、現地からオンラインで日本メディアの取材に応じた。地域を限定して戦闘が一時休止される予定で、清田氏は「人々の命のためなら、停戦はできるという例につなげたい」と意気込んだ。

 ワクチン接種は9月1日から、中部、南部、北部の順で予備日も含め12日間行う。中部ではUNRWA職員らが513のチームを組み、指定場所に来るのが困難な人には戸別訪問して対応する。世界保健機関(WHO)によると、この間、午前6時から午後3時まで戦闘が停止される。

国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の清田明宏保健局長

 10歳未満の子ども64万人を対象に9割以上の接種を目標とするが「順調に移動できるかなど不確定要素は多い」と課題を指摘。その上で「戦闘行為が対象地域でしっかり止まることを期待したい」と語った。

 ガザでは8月中旬、25年ぶりにポリオの感染が確認された。その後、新たな患者は確認されていないが、住民らの医療へのアクセスは限られており「ポリオが広がっていないとは限らない」と指摘した。

 昨年10月の戦闘開始以降、清田氏がガザに入るのは3回目。衛生環境は劣悪で、下水が道にあふれ、ゴミの山ができているという。空爆でインフラが破壊され、住民が一部の地域に集中して住んでおり、「衛生環境を維持するのは困難な状況だ」と述べた。

 ポリオは主に5歳以下の子どもがかかることが多く、感染者の排せつ物などを介してうつる。発症すると手足に後遺症としてまひが残ることがある。【エルサレム松岡大地】

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。