「彼は私たちを動物と呼んだ。彼は私たちの死刑を求める全面広告に8万5000ドルを費やした」--。米中西部イリノイ州シカゴで開催中の民主党全国大会で22日、ニューヨーク市で35年前に起きた冤罪(えんざい)事件の被害者らが登壇し、因縁があるドナルド・トランプ前大統領への批判を繰り広げた。
事件は1989年にニューヨーク市のセントラルパークで起きた。ランニング中の白人女性を暴行したなどとして逮捕されたのは、当時10代だった黒人とヒスパニックの少年5人。強要された自白の内容を基に有罪判決を受けて服役した。2002年にDNA鑑定と真犯人の自白により無罪が確定した。
「不動産王」と呼ばれて知名度があったトランプ氏は、事件直後にニューヨーク・タイムズ紙などに死刑の復活を訴える全面広告を出し、社会の差別感情を刺激した。
民主党大会では、5人のうち4人が公民権運動活動家のアル・シャープトン師と共に登壇した。事件当時15歳だったユセフ・サラームさんは、トランプ氏に触れ「彼は決して変わらなかったし、これからも変わらない」と述べ、「あの男は、憎しみがアメリカを動かす力だと思っている。そうではない」と続けた。サラームさんは、昨年のニューヨーク市議選で初当選した。
服役期間が5人のうち最長の13年以上に及んだコーリー・ワイズさんは、カマラ・ハリス副大統領について「物事を公平にするために尽力してきた。大統領になっても同じことをするだろう」と支持を呼びかけた。
米メディアによると、トランプ氏は無罪が確定した後も5人への謝罪を拒んでいる。
ニューヨーク・タイムズによる最新の世論調査では、黒人有権者の間でのハリス氏の支持率は78%で、16%のトランプ氏を大きく引き離している。【ニューヨーク八田浩輔】
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