ミャンマーで実権を握る国軍のミンアウンフライン最高司令官は14日、首都ネピドーで中国の王毅外相と会談した。内戦状態のミャンマー情勢は国境を接する中国にとっても懸案で、両国は安定化に向けた協力を名目に距離を縮めている。
中国外務省などによると、会談で王氏は「民主化プロセスを再開し、長期的な平和と安定を実現する道を見いだすことを支持する」と述べ、早期の民政移管に向けて取り組むよう呼びかけた。ミンアウンフライン氏も「継続的な支援を期待する」と応じたという。
軍事政権は国勢調査を経て、2025年中の総選挙実施を目指す。ただ、民主派指導者のアウンサンスーチー氏が率いた「国民民主連盟(NLD)」などは排除されたままだ。ミャンマーでインフラ事業などを進めたい中国は、民主派や少数民族も含めた選挙を求めているとみられる。
新華社通信によると、王氏は訪問中、かつて旧軍政トップとして独裁体制を敷き、引退後も国軍への影響力を維持するタンシュエ氏とも面会した。6月にも国軍出身のテインセイン元大統領と北京で会い、総選挙の確実な実施をミンアウンフライン氏に促すよう求めたと伝えられる。
中国にとってミャンマーは、陸路でインド洋に抜ける要衝だ。中国内陸部雲南省からミャンマー西部のチャウピュー経済特区につながる「経済回廊」は習近平国家主席が打ち出した巨大経済圏構想「一帯一路」の主要ルートの一つで、道路や鉄道の建設プロジェクトが進む。
インド洋から原油や天然ガスを運ぶパイプラインも整備されており、米国との対立が長期化する中国にとってはエネルギー戦略の上でも重要なルートだ。中国としては、ミャンマー国内の混乱を早期に解消し、自国への影響を最小限にとどめたいとの思惑がある。
雲南省に隣接する北東部シャン州で少数民族武装勢力との戦闘で劣勢に立つ国軍も中国を頼りにする。歴史的なつながりなどから少数民族側に影響力があり、今年1月にも一時的な停戦を仲介した。今月上旬に同州にある国軍の拠点が陥落して事態が切迫する中、調停への期待は大きい。
国内の安定を求める点では一致する両者だが、思惑にはずれもある。米シンクタンク・米国平和研究所のジェイソン・タワー氏は、「中国の調停は投資を拡大するために国境地帯で軍の影響力を弱めることを重視している」と指摘。「危機に乗じて安全保障上の影響力を強める可能性が高い」と分析した。【バンコク武内彩、北京・岡崎英遠】
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