現代の戦争の姿を一変させたと言われる「ドローン」。戦場でその音を聞くことは恐怖でしかないと、多くの兵士たちが証言しています。
一方で、離れた安全な場所からドローンを操作する「ドローンパイロット」は、一体どのような感情で攻撃を行っているのでしょうか。
ある者は深刻なPTSDを患い、心の不調を訴える。その深刻な現状が浮かび上がります。
戦場で「ドローンに追跡」される恐怖
ウクライナの首都キーウ近郊に、戦争で心を病んだ人たちが通う、クリニックがあります。そこで、現役の兵士に話を聞くことができました。
ウクライナ軍兵士 ブラドさん
「ロシアのドローンに追いかけられたことがあります。ピックアップトラックで移動している時に、彼らのドローンが私たちを追いかけてきたので、機関銃で撃ち落としました」
最前線で戦う兵士の多くは、何かしらの恐怖を抱え、苦しみながら戦っている。そう語る、ブラドさんの恐怖とは…
ウクライナ軍兵士 ブラドさん
「私はドローンの音が嫌いです。飛んでいる時の音は死にたくなるような‥とても不快な音です。あの音を聞くと、どこかに隠れてうずくまりたくなります」
羽の音は、ドローンが近くにいる…つまり、殺される直前のサイン。その恐怖は、前線で戦う兵士の心を、むしばんでいるのです。
PTSDに苦しむ「ドローンパイロット」
ドローン戦争が、壊してゆく「人の心」。それは、ドローンを「操縦する側」にも及んでいます。
アメリカ北部に位置する、山あいの街。この街で一人の退役軍人と会うことができました。
ブレンダン・ブライアントさん(38)は、生まれ故郷である、この街に戻り、ひとりで暮らしていると言います。
「私は、善良なヒーローのような人間になりたかったのに、人を傷つける側の人間になっていました。その折り合いをつけるのが、本当に難しかったです。それが、PTSDの原因でした」
ブライアントさんは、19歳でアメリカ空軍に入隊。4年半、ドローンの操縦を担当して、心の病「PTSD」になったのです。
アメリカの基地から、ドローンを遠隔操作。1万キロ離れた、イラクやアフガニスタンの人物を監視。命令があれば攻撃する。それが、彼の仕事でした。
「人が座るところは、この程度の幅です。スロットルレバーとジョイスティックがあって、ここにキーボードもありました。そしてモニターが、ここと、ここと、ここと、ここと、ここ、ここと、ここと、ここにありました」
モニターに映し出されるのは、ドローンが捉えた、遠い中東の映像。そんな中…
「アフガニスタンの山岳地帯で、3人組の男性が歩いていました。すると、『武器を持っている。我々に敵対している』との理由で、攻撃するよう命令されたのです」
命令通り、ブライアントさんはミサイルを発射。2人は即死のようでしたが、一人は、まだ息がありました。
「彼の右足は吹き飛び、彼は足を押さえて転がり回っていました。上官が目をそらすなというので、彼の血があたりに広がり、地面や岩と見分けがつかなくなっていくのを、ただじっと見ていました」
モニター越しに人の命を奪う。
それは、テレビゲームと変わらない虚構の世界にしか思えませんでした。
「戦争で戦っているのに仕事が終わると、ビールとチキンを食べに行くんです。そのままストリップクラブに行く同僚もいました。おかしなことしてますよね」
ドローンで子どもを誤爆?
1万キロも離れた安全なところから、ドローンで、人を殺していく…
ブライアントさんの心は病んでいったと言います。
「朝の5時ごろだったと思います。ある家にターゲットがいるという情報が入り、やはり攻撃命令が下りました。ミサイルは家に命中。しかしそこで家に駆け込む人がいて、爆撃に巻き込まれたのです。報告書では、家に駆け込んだのは犬とされていましたが…あれは子どもでした。人間でした。ドアノブに手が届かない背丈の人間でした。犬ではありません」
退役するまでに、彼が遂行した攻撃は4000件以上、殺害したのは1626人に上るといいます。
「私には自殺願望がありました。安全装置のないドイツの警察用の銃を持っていて、その銃を使って自殺しようとしたこともあります。しかし愛犬のバロンが、擦り寄ってきたのを見て、銃を下ろしました」
アメリカ空軍のドローンパイロット700人余りを対象にした調査では、およそ6%、40人を超える人からPTSDが確認されたといいます。
(TBSテレビ「つなぐ、つながるSP 科学が変えた戦争 1945→2024」8月11日放送より)
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