終戦から79年目の夏を迎えました。しかし今、世界は平和とはほど遠い状況が続き、さらに核をめぐる新たな動きまで起きています。
■原爆の式典で物議
まもなく迎える終戦記念日。
しかし今、世界ではウクライナ、ガザと、戦火が絶えません。こうした戦争による対立は、今年(2024年)の「原爆の日」にも、影を落としました。
2024年8月6日に開かれた広島の平和記念式典では、ガザで戦闘を続けるイスラエルを招待したことに、一部から批判の声が上がります。
■G7の大使らが出席せず
片や、長崎の式典では、「不測の事態発生の懸念」を理由にイスラエルを招待しませんでした。
アメリカ エマニュエル 駐日大使(8月9日)
「政治的な判断だと思う。安全上の理由ではないでしょう」
結局、日本を除く、G7の駐日大使らは、今回招待しなかったロシアやベラルーシとイスラエルを同列に扱うものだとして、参加を見送りました。
イスラエルをめぐって物議をかもした今年の原爆の日。こうした中、長崎の鈴木市長は平和宣言の中で、世界の状況を憂いました。
長崎市 鈴木史朗 市長
「被爆から79年、私たち人類は核兵器を使ってはならないという人道上の規範を守り抜いてきました。中東での武力紛争の拡大が懸念される中、これまで守られてきた重要な規範が失われるかもしれない」
■国連の軍縮部門トップ「なぜ後戻りしようとしているのか」
今から15年前の2009年、当時のアメリカのオバマ大統領は、「核兵器なき世界」の理想を訴えました。
アメリカ オバマ 大統領(2009年当時)
「きょう、私は明確に信念を持って、アメリカが核兵器のない世界の平和と安全を目指すことを宣言します」
しかし、それ以降、世界はむしろ逆方向に進んでいます。
2024年7月、ロシアは戦術核兵器の使用を想定した演習の映像を公開しました。
ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によると、核弾頭数について、中国では90発増え、北朝鮮では20発増えているとしています。(6月・昨年比)
アメリカも核弾頭が搭載可能なミサイルの発射実験を行っています。
そうした中、7月から、NPT(核拡散防止条約)の関連会合が、スイスで開かれました。そもそも、この条約は、アメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国の5か国を核兵器保有国と定め、核軍縮交渉を義務づけています。
現実には、核戦力は増強、拡散する方向にあり、国連の軍縮部門トップは…
国連事務次長 中満泉 軍縮担当上級代表(7月22日)
「私たちは学んだはずのことを、なぜ後戻りしようとしているのか」
その真意について…
国連事務次長 中満泉 軍縮担当上級代表(8月8日)
「教訓があったはずなのに、どうしてその教訓に背を向けるような形で、今、核軍縮ではなく、核軍拡のような、つまり後退しているんだろうかと」
■日米「核の傘」強化を確認
そうした中、唯一の被爆国である日本でも今、「核」を巡る新たな動きが起きています。
アメリカ オースティン 国防長官(7月28日)
「アメリカは核戦力を含むあらゆる能力を生かして、確実に日本の防衛に関与することを再確認した」
7月、日米は拡大抑止に関する初の閣僚会合を開催。アメリカの核などで日本を守る、「拡大抑止」、いわゆる「核の傘」の強化を確認しました。
こうした方向性に…
広島市 松井一実 市長(8月6日)
「行動を起こしましょう。そうすれば核抑止力に依存する為政者に、政策転換を促すことができるはずです」
しかし、岸田総理は拡抑止の重要性を強調した上で…
岸田総理(8月6日)
「(核の傘は)核兵器のない世界に逆行するのではないか、そぐわないのではないかというご指摘ですが、私はそうは考えておりません」
■国連の軍縮部門トップ 核抑止だけに頼ることに懸念示す
一方で、中満さんは、日本の安全保障上、アメリカによる核抑止は必要だとしつつも…
国連事務次長 中満泉 軍縮担当上級代表(8月8日)
「核抑止だけに頼って安全保障というのは、やはり“運試し”的なところもあって、以前、核抑止によるバランスが保たれていた状況とは激変している」
かつての米ソ冷戦時代と違い、多極化した今の世界で核抑止だけに頼ることに懸念を示し、日本が果たすべき役割について訴えます。
国連事務次長 中満泉 軍縮担当上級代表(8月8日)
「『今は軍縮を語るときではない』とか、『そういうお花畑理想論を語る時ではない』と言う人がいるが、全くそうではない。日本は、唯一の戦争被爆国ということで、何よりも今のような状況だからこそ、(核の廃絶を)発信していくということは、すごく重要なポイント」
迎えた79年目の夏。
広島の高校生
「私たちは子どものころから、いろんな平和のことについて学んできたので、それを未来にもつないでいきたいと思っています」
(「サンデーモーニング」2024年8月11日放送より)
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