パリ五輪の表彰台で自撮りをする北朝鮮や中国、日本などのレスリング選手たち=パリで8月6日、AP

 パリ・オリンピックで韓国のサムスン電子が各国の代表選手らに配布した最新型スマートフォンが、意外な盲点から物議を醸している。それは、北朝鮮に対する国連安全保障理事会の制裁決議違反になるおそれがあるとの指摘だ。

 韓国での報道によると、国際オリンピック委員会(IOC)は8日、「北朝鮮選手団はスマホを受け取っていない」との公式見解を示し、疑念を一蹴した。一方、米政府系の自由アジア放送は先に「北朝鮮の五輪委員会が選手分をまとめて受け取った」と報じている。

 国連の制裁では北朝鮮への産業用機械類の供給や販売・移転が禁止され、スマホも規制対象だ。

地下鉄駅構内に設置されたサムスン電子のスマートフォンの広告=ソウルで7月31日、AP

 韓国外務省は8日、「制裁決議に違反しないためには北朝鮮へ持ち込まれないことが重要」とし、「外交努力をしている」と説明した。聯合ニュースによると、既に北朝鮮の代表選手の一部はフランスを出国している。

 韓国メディアは「北朝鮮当局が選手から配布スマホを押収し、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記やその家族の手に渡る可能性がある」との専門家の見方を伝えた。

 議論の的になっているのは、大会スポンサーのサムスン電子が無償提供した最新スマホだ。選手同士の意思疎通に寄与するためとして、計1万7000台が配布された。

 五輪初の試みとなる、表彰台で優勝選手らが自撮りする企画「ビクトリーセルフィー」でも、同型のスマホが使われている。この企画では、卓球で中国、北朝鮮、韓国の選手たちが一緒に自撮りをするといった場面も生まれ、話題になった。

 北朝鮮では、2023年7月に金正恩氏がミサイル発射試験を現地指導した際の報道写真にサムスン製とみられるスマホが映っていた事例がある。今回、パリ五輪で配布されたタイプにも似ているという。【ソウル日下部元美】

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