【シンガポール=森浩】インドで19日、下院(定数545)総選挙の1回目の投票が始まった。モディ首相のインド人民党(BJP)が優勢で、2014年から首相を務めるモディ氏の3期目入りが現実味を帯びている。経済成長を遂げ、国際社会での存在感が増すインド。国内では野党弾圧が続く中、有権者約9億7千万人の「世界最大の選挙」の判断が注目される。
総選挙の投票は州や地域ごとに7回に分けて実施され、19日の1回目の投票は北部ウッタルプラデシュ州の一部や南部タミルナド州で行われた。開票は6月4日に一斉に行われる。
選挙の争点は、モディ政権の2期10年の評価だ。
「(現在の最大野党)国民会議派が60年でできなかったことをモディは10年でやった。国民の夢が最優先事項だ」。モディ氏は17日の演説で、長年与党を担った国民会議派を批判し、自身の実績を強調した。
モディ政権下で、インドは経済成長を遂げ、22年には国内総生産(GDP)が世界5位になった。BJPは、10年間で2億5千万人が貧困から抜け出したと主張している。選挙のマニフェスト(政権公約)では高速鉄道などインフラ整備の充実を打ち出し、さらなる成長を約束した。
国内でBJPは「ヒンズー至上主義」を掲げ、人口の約8割を占めるヒンズー教徒から強い支持を集める。1月には事実上の政府の支援で、北部アヨーディヤのモスク(イスラム教礼拝所)跡地に大規模なヒンズー教寺院を建立し、支持固めを狙った。
一方、選挙勝利を確実にするため、モディ政権は野党側への締め付けを強化している。3月には汚職に関与したとして、モディ政権を批判していたデリー首都圏政府トップのケジリワル首相が逮捕された。当局は税務上の不備を指摘して国民会議派の銀行口座を凍結し、同派は選挙集会の開催に支障が出ている。
地元テレビ局は世論調査の結果として、選挙ではBJPが単独で342議席を確保し、BJPを軸とする与党連合では400議席近く獲得する見通しだと報じた。国民会議派は、BJPに対抗すべく、他の野党と政党連合「インド国家開発包括同盟(INDIA)」を結成したが、勢いは乏しい。世論調査によると、国民会議派の獲得議席は40を割り込む見通しだ。
モディ政権は対外面では欧米や日本と関係を深める一方、伝統的友好国であるロシアとも良好な関係を維持する。近年は「グローバルサウス(GS)」と呼ばれる新興・途上国の盟主を自任。モディ氏は3期目に入っても、国是である「戦略的自律」を追求し、独自外交を進める考えだ。
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