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追跡6年。どんなレトロな家電でも修理成功率90%を誇る家電修理の達人・今井和美さん(65)。修理文化が根付く国・タイでの修理旅の続編です。修理を終えたはずの“8ミリフィルム映写機”がまさかの爆発!果たしてこのピンチを切り抜けられるのか…。

■エアコンから、ポタポタと水が…

タイに渡り「野外映画」を上映するためのフィルム映写機の修理に成功した今井さん。せっかくなら他にも依頼がないか探すと、やってきたのはバンコク市内にあるマンションの一室。

タイのメーカーのエアコン この記事の写真 今井さん
「コレかな?サンヨーじゃない。サイジョーデンキなんだ。知らん」

今井さんも初めて目にするタイのメーカーのエアコンです。修理を依頼したのは、オーンさん(40)。

修理を依頼したオーンさん オーンさん
「3〜4カ月くらい前から水が垂れてきちゃって」 ポタポタと水が垂れ…

たしかにエアコンからは、ポタポタと水が垂れ、電源を入れても冷えが悪いと言います。

オーンさん
「これは自分で買った人生で初めてのエアコンなんです。高いから買い替えられません。エアコンはタイではとても高価なモノなんです」 当時の月給ほぼ全額をつぎ込み購入

オーンさんは10年前、当時の月給ほぼ全額をつぎ込みおよそ8万円で購入したといいます。早速、点検開始。

今井さん
「外すとドボドボってとんでもないことになる」 原因は大量のホコリ

エアコン内部には、大量の水がたまっていました。原因は大量のホコリが排水管に詰まっていたからのようです。

今井さん
「このエアコンのゴミだ。このホコリだ」 通訳
「バンコクってホコリが多いんです」

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■“即席洗浄機”作戦で

■“即席洗浄機”作戦で

今井さん
「要は詰まっているから電器屋さんというより配管屋さん。水道屋さんです。きょうは水道屋さんです。今井水道店タイ出張所(笑)」 ゴミを外に押し出す作戦

今井さんがホースを引っ張り、エアコンに差し込みます。ホースの水圧で排水管に詰まったゴミを外に押し出すのだと言います。

今井さん
「本当は高圧洗浄機でバーッとやるんだけど」

“即席洗浄機”作戦です。

今井さん
「出てきた?」 通訳
「出てきました」

果たして作戦は成功したのか…。

オーンさん
「涼しくなった」

ちゃんと動きました!もちろん水は1滴も垂れてきません。

“即席洗浄機”作戦は成功! 今井さん
「完了!」 オーンさん
「アリガトウ」 今井さん
「おう!」 今井さんのステッカー

記念に今井さんのステッカーをペタリ。オーンさん、もう一台直してほしいエアコンがあると言います。

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■約50年前の「ナショナル」エアコンが!

■約50年前の「ナショナル」エアコンが!

メークロン市場

そこで、翌日向かったのはバンコクから車でおよそ1時間半の場所にある、観光の街・メークロン。

今井さん
「な、ナマズだ。スゴイ生きてるで」 しっかり観光も楽しむ

この街の名物が市場の中を走る鉄道です。今井さんしっかり観光も楽しみ、にぎやかな市場から徒歩5分。

そこはオーンさんの夫、オートさん(40)が切り盛りする食堂です。待っていたのは、今井さんもびっくりの超年代物でした!

今井さん
「古いね。コレはね」 「ナショナル」のエアコン

50年ほど前に製造された「ナショナル」のエアコンです。

オートさん オートさん
「このエアコンは僕が生まれる前からこの家にありました。とても高価なモノで父が苦労して買ったんです」 オートさんの父親・スワットさん

2年前、脳出血で倒れたオートさんの父親・スワットさんが、ずっと大切にしてきたエアコンだといいます

オートさん
「新しいエアコンに変えようと言ったけど『これが良い』って父が反対したんです。お金をためて頑張って買ったエアコンだから」

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■「孫の代まで使い続けます」

■「孫の代まで使い続けます」

現在、療養中の父がこの部屋に帰ってきた時に喜んでもらえるよう、修理したいのだといいます。今井さんは、その思いに応えることができるのでしょうか?

今井さん
「風は出るけど冷えないってこと?」 風は出るが、冷えない

風は出ているものの、一向に冷たくなりません。

今井さん
「さてどうしよう」 なぜか、窓から外へ出る今井さん

首をひねる今井さん。まもなく、何かに気が付いたようです。するとなぜか、窓から外へ出る今井さん。どうやら、エアコン本体でなく、室外機に原因があるとにらんだようです

今井さん
「このあたりからガスが抜けた形跡があるね。ちょっと色が変わっているから。このくらい年数が経てば仕方ない」 ガスが漏れていた

空気を冷却するためのガスが漏れていたようです。そこで、現地の専門店で買ってきてもらったガスを注入。

今井さん
「ガスを入れすぎると壊れちゃう。負荷がかかって」 配管が緩み…

通常の使用でエアコンガスの補充が必要になることはないそうですが、経年劣化とタイ特有の暑さで配管が緩み、漏れてしまったのではと今井さんは言います。

作業は完了。果たして…。

オーンさん
「涼しいです」 「涼しいです」

見事復活です。

オートさん
「きっとお父さんが知ったら喜びます。僕の子どもから孫の代まで使い続けます」 お父さんに報告

後日、直ったことをお父さんに報告。皆の思い、きっとお父さんに届いたはずです。

オートさん
「お父さんの部屋のエアコン直ったよ」

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■「昔の日本のよう」なタイ 思いがけず…

■「昔の日本のよう」なタイ 思いがけず…

家電修理の屋台

家電は買い替えるよりも、修理して使い続けるもの。そんな考えが根付いているというタイ。こんなイベントも人気です。

イベント主催者
「ここは、修理が得意な人たちがボランティアで集まり修理やアドバイスをする場所です」 修理が得意な人たちがボランティアで集まる

その名も「リペアカフェ」。修理が得意なボランティアが集まり、様々な物の修理を受け付けているんです。そこへ今井さんも飛び入り参加。

今井さん
「これなんかで挟んだのかな?」
「ネコ!?ニャ〜ン」 断線した痕が

持ち込まれたイヤホン。

飼いネコがかみ…

飼いネコちゃんが噛んで、聞こえなくなってしまったんだとか。確かにイヤホンには断線した痕がありました。

「昔の日本を見たような」 今井さん
「イヤホン直してくれという言う人日本にいない。いろいろ勉強になったね。日本も昔はそうだったかも、もっと修理していた。昔の日本を見たような気がします」

今回、せっかくタイに来たからと腕磨きを兼ね、修理の旅を続けた今井さん。滞在の最終日に訪れた場所で、この旅は思いがけない展開を迎えることになったのです。

テープさん

依頼人は、映像関係の仕事をするテープさん(47)。その部屋にはレトロな家電がいくつも並んでいました。

今井さん
「レトロ家電博物館だね」 テープさん
「そうなんです。レトロなものが好きなんです。動いたらすごい、誰も見たことないよ」

いつかこのレトロ家電を展示し、たくさんの人に見せてあげたいのだと言います。

1970年代製造、日本製の8ミリフィルム映写機

テープさんが、ぜひ動くところを見てみたいという1970年代に製造された日本製の8ミリフィルム映写機。早速、点検開始。

今井さん
「動くけど光も出ないし、回らないね。これユルユルだ。こりゃダメだ〜。回らない原因はコレだ」

およそ半世紀前に製造された映写機は、至る所にがたがきていて、とてもこの日すべての箇所を修理できる状態ではなさそう。

今井さん
「良いよねモノを大事にするって。日本だったらすぐ捨てちゃう。じゃあ、預かりましょう」 職人魂に火がついた今井さん

職人魂に火がついた今井さんは日本へ持ち帰り、修理を続けることを約束したのです。

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■直したのに爆発!煙が…

■直したのに爆発!煙が…

三重県にある今井さんの作業場

後日、修理の舞台は、三重県にある今井さんの作業場へ。8ミリ映写機の修理に挑みます。

今井さん
「ピッタリね」

リールを回転させる消耗品のゴムを、すべて新品に交換。

今井さん
「ここほら、回らん。かたいな。サビついてる。オイル切れでカチカチにくっついちゃっている」 可動部のあちこちにサビが

長年動いていなかったため、可動部のあちこちがサビついてしまっていました。

今井さん
「あらら動かない。全然ダメだ」

それでも、根気よく油を差し続けていくと…。

今井さん
「ほら、なんとなく早くなったような気がしない?んんん〜もうダメ〜な回転だったけど最初は。たいぶ良い音になったね」 再びタイへ

これにて修理は完了しましたが、今井さん「ある理由から」自ら映写機を持って再びタイへ。果たして8ミリ映写機は映像を映し出すことができるのでしょうか?

テープさん
「本当に直った!この音は今の時代じゃ聞けないよ。タイでこんな修理人見たことない」 「タイでこんな修理人見たことない」 通訳
「今井さんめっちゃカッコイイです。こんなモノを修理できるなんてカッコイイ」 大興奮のテープさん

初めて動いているところを見てテープさん大興奮です。しかしこの後、思いもよらない事態が発生しました。

映写機の中で何かが爆発

それはテープさんが使い方を教わっている時のこと。突如、映写機の中で何かが爆発。

今井さん
「何かが…部品が壊れたね」

直したはずの映写機が煙を上げています。修理は失敗だったのでしょうか?

心配するテープさん テープさん
「僕が使い方を間違えたから?」 今井さん
「いや違う違う。古いから電気入れてしばらくすると、壊れることがある」

あまりにも長年放置した家電に電気を流すと、摩耗した古い部品がショートすることもあるのだといいます。

今井さん
「コンデンサーね」 最後まで修理できるように、現地へ

電気を蓄えたり放出する部品が、ぱっくりと割れ中身が飛び出していました。実は今井さん、万が一のこうした事態に備え最後まで修理できるよう、自ら現地に来たかったんです。

今井さん
「いけるか?生き返りました。生き返りました」 本当に修理完了!

これにて本当に修理完了です!

テープさん
「僕が壊したかと思った」 ホッと一安心のテープさん

テープさんもホッと一安心。

今井さんのタイ修理旅は、10日間。6件の依頼を受け、すべて修理に成功。微笑みの国で、たくさんの笑顔を生み出すことができました。

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