TBSラジオ「人権TODAY」では去年、千葉県松戸市のウイグル料理店を取材しました。その時は店主のハリマト・ローズさん(50)に、同じウイグル人の仲間が「再教育施設」という名の強制収容所送りにされていることや、民族弾圧などの人権問題があるという話を聞きましたが、それから1年経って、新たにローズさんの家族に関する気になる情報があり、その話を聞きにローズさんのもとを訪ねました。

祭りで大人気!ローズさんの「ケバブ」

ケバブ購入客とじゃんけんをするハリマト・ローズさん

その日はちょうど、お店のある新松戸の駅前でお祭りがあり、いろんな食べ物の露店が並ぶ中、ローズさんもお店の看板メニューのケバブなどを作って、威勢のいい声でお客さんを呼び込んでいました。お客さんの列はほとんど途切れず、人気の「ラムの串焼き」は早々に売り切れる大盛況。お客さんもジャンケンをして、ローズさんとの会話を楽しんでいました。

母が亡くなっても現地の家族と連絡はとれない

そんな楽しいお祭りが終わった段階で、ローズさんの家族に関することを聞きました。実は、ウイグルに住むローズさんの母親が今年の5月に亡くなったといいます。

ハリマト・ローズさん
「トルコに住んでいる友達の妹が私の奥さんに電話を入れて『ローズさんのお母さんが亡くなったよ』と。私は6人兄弟だから、みんなに電話したけど誰も出ない。WeChat(日本のLINEと同じようなアプリ)も全部ブロックされちゃって。外国から入っている電話は出ない。どうやって亡くなったか、なんで亡くなったか。今でもまだ連絡が取れない」

ローズさんによると、中国の警察はウイグル人を厳しく監視していて、日本を含め海外と連絡をしただけでテロリスト扱いされ、強制収容所に入れられてしまうそうです。また、家の周りにカメラを設置して、弔いに来る人をすべてチェックしているといいます。ローズさんは「息子として本当は今すぐにでも故郷に行き、母に祈りを捧げたい気持ちだが、現実にはそういうことはできない」と話します。

身近な人が収容所で不審死

そして実際にローズさんの周りでも、強制収容所に入れられた人がいます。ローズさんは、日本にいるウイグルの子どもたちのために母国語であるウイグル語を教える教室を10年前から開いているのですが、そこで先生をしていたウイグル人留学生のミヒライ・エリキンさんはウイグルに住む親の身を案じて、5年前ローズさんに連絡せずに帰ってしまったそうです。彼女は母親を通じて中国当局から帰国するよう圧力をかけられたとみられ、その後、強制収容所に入れられ、ほどなくして亡くなったことがわかりました。

ウルムチ騒乱から15年

7月5日。新疆ウイグル自治区で「ウルムチ騒乱」などと呼ばれる大規模な暴動が起きてから15年となり、日本ウイグル協会が会見を開きました。ウイグル族による中国政府への抗議デモをきっかけに起きたこの事件。中国政府はおよそ200人が死亡したと発表していますが、一方では数千人が亡くなったともいわれています。そして、このウルムチ騒乱のあとで、中国政府はテロ対策の名のもと、ウイグル族など少数民族に対する抑圧政策をとってきているとされています。

日本ウイグル協会 レテプ・アフメット会長

レテプ・アフメット 日本ウイグル協会会長
「ウルムチ事件について、この15周年を機に注目してほしいと私たちが思っているのが、世界中のウイグル人の人生を大きく変えてしまった事件なんですね。今話題にされているウイグルの強制労働問題は、このウルムチ事件が大きく関わっていたものだった。それによって、今私たちがいろんなことを訴えています。強制収容所のこともそうです。親子が連絡を取れないのもそうです。ぜひとも世界中の人たちに考え直していただきたい」

「平和的なデモを悲惨な衝突に変えてしまった中国の責任は重い」と訴えるアフメット氏。故郷を壊され、仲間を奪われたと話すウイグル人が日本にも多くいます。

■取材協力
ローズジャンケンケバブ
日本ウイグル協会

(TBSラジオ「人権TODAY」担当:進藤誠人)

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