中国共産党の3中全会に臨む習近平国家主席=新華社AP   

 「絶対的な権力は絶対に腐敗する」。そんな格言もある通り、強大な権限を握る中国共産党にとって、汚職の一掃は難題のようだ。

 習指導部は元々、汚職に手を染めた幹部の摘発を通して権力基盤を固めてきた。だが現在は、国民の政治不信に危機感を強め、問題解決に取り組む姿勢をアピールしている。

 7月21日に全文が公開された党の重要会議「第20期中央委員会第3回総会(3中全会)」の決定では、習近平国家主席(党総書記)の看板政策である「反腐敗(汚職)闘争」の推進が改めて掲げられた。

 「力を入れて、腐敗を生み出す温床と環境を取り除く」。決定ではこう強調し、汚職対策の法整備を拡充し、党内の引き締めを徹底する姿勢を示した。

 習氏は2012年に最高指導者に就任して以来、汚職の一掃を掲げ、国民から高い支持を得てきた。過剰な接待や贈答品の授受を禁じる規定を設け、膨大な人数の幹部を処分してきた。

 しかし、中国における汚職体質は根深く、一掃にはほど遠い状況だ。最高人民検察院(最高検)の報告によると、23年に汚職などの不正で送致された公務員は約2万人と前年から1割近く増加し、このうち起訴された閣僚級以上の高官は25人に上った。

 今年に入っても、現職の農業農村相や前司法相らの摘発が相次ぐ。さらに軍の大規模な汚職疑惑が発覚し、李尚福前国防相や魏鳳和元国防相、ロケット軍の李玉超前司令官らが党籍剥奪処分となった。

 この間の「反腐敗闘争」の変質も見逃せない。当初は、習氏にとって政敵とも言える立場の前政権幹部らの摘発が目立ち、自らの政治基盤固めに利用して威力を発揮した側面があった。だが、最近は、李前国防相に代表されるように、習氏自らが登用した幹部も汚職に手を染めていることが明らかになった。

 中国では、景気停滞の閉塞(へいそく)感も相まって、国民の政治を見る目は厳しさを増している。

 財政難に直面する一部の地方自治体は罰金や税金の徴収に血道を上げ、住民に反感が広がっている。また、習氏をトップとする党への権力集中によって、公職者の間で上司の顔色ばかりをうかがう「事なかれ主義」がまん延し、行政サービスの硬直化が指摘されている。

 危機感を抱く習指導部は「綱紀粛正」に躍起だ。3中全会の決定でも「清廉公正な幹部を大いに抜てきし、幹部の職権乱用、履行能力の欠如などの問題の解決に力を入れる」との一文が盛り込まれた。【北京・河津啓介】

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