米民主党のジョー・バイデン大統領(81)の大統領選撤退表明を受けて、米メディアは相次いで速報した。リベラル系では、高齢不安を抱えて党内で撤退圧力が高まっていた中でのバイデン氏の決断を評価する論調が目立った。一方、保守系は、民主党には国を率いる力がないと批判を強めている。
リベラル派の有力紙であるニューヨーク・タイムズ(電子版)は、社説で「勇気ある選択をした」と評価した。同紙は、バイデン氏とトランプ氏の戦いだった前回2020年大統領選ではバイデン氏を支持していた。しかし、バイデン氏が精彩を欠いた6月下旬のテレビ討論会以降、選挙戦から撤退するよう社説で提言。民主党内の「バイデン降ろし」の勢いを加速させた。
同紙は、今回の決断を政治家としてふさわしい幕引きだったとした上で、バイデン氏は大統領として国に尽くしてきたとたたえた。選挙戦にとどまっていれば共和党のドナルド・トランプ前大統領(78)が返り咲く可能性を高めていたと指摘し、「バイデン氏はトランプ氏が決してしないことをした。プライドや野心より国益を優先した」と強調した。
バイデン氏は21日、選挙戦からの撤退と同時に、後任の候補としてカマラ・ハリス副大統領(59)を推薦した。
主要紙ワシントン・ポスト(電子版)は社説で、この推薦について、ハリス氏は8月の民主党大会で候補指名を受ける「最有力候補」だが「党は開かれたプロセスを受け入れるべきだ」と提言。予備選をする必要はないが、有力候補同士の討論会は実施可能だと訴え、ハリス氏が「唯一の選択肢ではない」とも主張した。
ポスト紙はさらに、バイデン氏に対し、いま重要なのは次期大統領のため「国を可能な限り最良な状態にすることだ」と注文を付けた。選挙戦の重荷から解放されたバイデン氏は、パレスチナ自治区ガザ地区で続くイスラエル軍とイスラム組織ハマスとの戦闘や、米国のインフレ問題などの解決に力を注ぐことができると呼びかけた。
一方、本選が迫る時期の撤退表明について、保守系のFOXニュースは、もはや一般の有権者は民主党の大統領選指名候補者を選ぶことができないと批判的に論評した。選択の機会があるのは党大会に招集される代議員など「数千人のエリートたちだ」と指摘し、「これは建国の父たちが築き上げた民主国家にふさわしいプロセスではない」とした。
「年老いた無能な大統領が(後任として)支持したのは、無能な副大統領だ」とも酷評。ハリス氏の資質を疑問視し、民主党には「偉大な米国を率いる人物は誰一人いない」と厳しい言葉を並べた。【ニューヨーク中村聡也】
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