7月7日に国民議会(下院、定数577)選挙決選投票を終えたフランスで、新首相の選出や組閣の連立交渉が難航している。最大勢力となった左派連合「新人民戦線」で首相候補がまとまらず、マクロン大統領率いる第2勢力の与党連合を中心とする新政権が実現するとの見方も出ている。
決選投票の結果、急進左派「不服従のフランス」(LFI)や社会党、共産党などで構成する左派連合が182議席、中道の与党連合が168議席、極右の「国民連合」が143議席を獲得した。どのグループも過半数に達しなかった。
フランス憲法は大統領のみが首相の任命権を持つと規定している。不信任案で議会が停滞するのを避けるため、法的義務はないものの、最大グループから首相を選出するのが慣例となってきた。今回も専門家の間で、左派連合が首相候補を統一できれば、マクロン氏も無視できないとの見方が強い。
だが左派連合はまとまりを欠いている。その原因となっているのが、左派連合内で最多の議席を得たLFIを率いるメランション氏だ。メランション氏は2022年の大統領選、国民議会総選挙で躍進して以降、過激な発言などで国民の人気が低迷。左派勢力内でも孤立を深めている。
調査会社IPSOSが国民議会選第1回投票前の6月27日に発表した世論調査結果では、メランション氏は首相にふさわしくないとの回答が78%に達し、国民連合のマリーヌ・ルペン氏の55%を大幅に上回った。政策面で対立してきたマクロン氏もLFIの政権入りに難色を示している。
一方、政権獲得の可能性が高まってきたのが与党連合だ。18日に招集された国民議会で、与党連合のヤエル・ブロンピベ氏の議長再選が決まった。右派「共和党」の協力を受け、左派連合の共産党候補を僅差で破った。与党連合と共和党の連携が実現したことから、仏メディアでは、与党連合からの首相選出や、両グループを軸とし、LFIを除く左派連合の一部を取り込んだ連立の可能性を指摘する声が出ている。だが今後順調に交渉が進むかは、なお予断を許さない。
マクロン氏は16日、それまで慰留していたアタル首相の辞任を認めたが、アタル氏は当面、暫定的に政府を率い、26日からのパリ五輪・パラリンピックなどを担当する。連立交渉がまとまらない場合は、暫定政府が10月1日に予定される国民議会の通常議会まで続く可能性もある。【ブリュッセル宮川裕章】
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