米中西部ウィスコンシン州ミルウォーキーで開かれた共和党全国大会で、大統領候補の指名受諾演説に臨むトランプ前大統領=2024年7月18日、秋山信一撮影

 米共和党の大統領候補に指名されたドナルド・トランプ前大統領(78)が18日、中西部ウィスコンシン州ミルウォーキーであった同党全国大会で受諾演説を行った。「米社会の不和と分断は、速やかに癒やされなければならない。私は米国全体のための大統領であるために立候補した」と訴え、「分断を助長している」というイメージの転換を図った。

 13日の銃撃事件後、トランプ氏の公の場での演説は初めて。同党大会は18日、4日間の日程を終えて終了した。

米共和党全国大会で指名受諾演説に臨んだトランプ前大統領=米中西部ウィスコンシン州ミルウォーキーで2024年7月18日、ロイター

 トランプ氏は演説の冒頭、「4カ月後にすばらしい勝利を手にする。安全で、繁栄し、市民の自由がある新たな時代をともに立ち上げよう」と支持者にアピールした後、「不和と分断」に言及。「ともに立ち上がるか、ばらばらになるかのどちらかだ」と訴え、政治的な分断の解消を呼びかけた。

 演説前半では銃撃事件について「暗殺者の銃弾があと0・25インチ(約6ミリ)ずれていれば、命を奪われるところだった」「ヒューという大きな音がして、右耳に何かが当たったのを感じた。手をやると、血がべっとりついた」と詳細に回顧。「私は今夜、ここにいるはずではなかった。全能の神の恩恵によって、この場にいる」と述べた。

米共和党全国大会で大統領候補の指名受諾演説を終え、副大統領候補のバンス氏(右から2人目)らと共に壇上に立つトランプ前大統領(中央)=米ミルウォーキーで2024年7月18日、AP

 後半は普段通り、バイデン政権がインフレ(物価高)や不法移民の増加、米国の国際的地位の低下を招いたと批判。ただ、従来に比べると、攻撃的な言動は抑え気味で、自身の支持層以外へのアピールを意識した内容となった。

 トランプ氏は当初、民主党のジョー・バイデン大統領(81)との対決色を前面に出す方針だった。しかし、13日の銃撃事件を受けて演説原稿を書き直した。

 今回の党大会では、候補指名を争ったニッキー・ヘイリー元国連大使(52)らもトランプ氏支持を明確にして、党内の結束を演出した。

米共和党全国大会でトランプ前大統領が指名受諾演説を行ったステージ上のモニターには、暗殺未遂事件直後に撮影された、負傷した同氏が拳を突き上げる写真が映し出された=米中西部ウィスコンシン州ミルウォーキーで2024年7月18日、ロイター

 ただ、党穏健派や反トランプ派の多くが参加しておらず、無党派層の支持拡大も依然として課題だ。大統領選に向けて、今回打ち出した融和や団結を呼びかけるメッセージが「本物」だと理解してもらえるかがカギになりそうだ。

 ライバルの民主党は8月19~22日に中西部イリノイ州シカゴで党全国大会を開き、大統領候補を確定させる。ただ、候補指名争いを制したバイデン氏は、6月のトランプ氏とのテレビ討論会で高齢不安を露呈し、党内から選挙戦撤退を求める声が噴出している。

米中西部ウィスコンシン州ミルウォーキーで開かれた共和党全国大会で、大統領候補の指名受諾演説中に聴衆に応えるトランプ前大統領=2024年7月18日、秋山信一撮影

 2大政党以外にも弁護士のロバート・ケネディ・ジュニア氏(70)が出馬を目指し、環境政策を重視する「緑の党」など小規模政党も候補を擁立する。

 政治サイト「リアル・クリア・ポリティクス」の各種世論調査の集計(18日現在)によると、トランプ氏の支持率は43・1%で、バイデン氏(39・4%)やケネディ氏(8・5%)をリード。勝敗のカギを握る接戦7州では、いずれもトランプ氏がバイデン氏をリードしている。

 米大統領選は11月5日に投票日を迎える。早い州では9月から期日前投票が始まる予定だ。【ミルウォーキー秋山信一、八田浩輔】

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。