世界が衝撃を受けた、アメリカ・トランプ前大統領の暗殺未遂事件。発生から1日が経つ中、容疑者像や犯行当時の様子などが徐々に明らかになってきています。
「銃撃犯に予定を変更させるのは許されないと判断」 大統領選などへの影響は?
井上貴博キャスター:
今後のアメリカ大統領選、世界経済・世界政治への影響などはどうなるのでしょうか。
ドナルド・トランプ前大統領への銃撃未遂事件は、アメリカのペンシルベニア州・バトラーで発生しました。
銃撃犯がいたとみられる場所から、トランプ氏がいた会場までは、約135m離れていました。トランプ氏は右耳を撃たれ、観客1人が死亡、2人が重傷を負いました。
容疑者はトーマス・クルックス容疑者(20)で、FBIは単独犯とみて、捜査しています。
バイデン大統領(現地時間14日)
「アメリカでは意見の違いを、銃弾ではなく、投票箱で解決するのだ。今こそ冷静になるときだ」
バイデン大統領はこのようなメッセージを発信しました。
トランプ氏も自身のSNSを更新しました。
トランプ氏(現地時間14日・SNSより)
「きのうの恐ろしい事件を受けて、共和党全国大会の参加を2日遅らせる予定だったが、銃撃犯に予定を変更させるのは許されないと判断した」
党大会はもうすぐ行われます。
【大統領選に向けて】
7月15日~18日、共和党全国大会
8月19日~22日、民主党全国大会
9月10日、大統領候補者討論会
11月5日、投開票
これまでも支持率ではトランプ氏が上回っています。最新のデータではバイデン大統領が44.4%、トランプ氏が47.1%で、3ポイントほどの差が出ているということです。(Real Clear Politicsより)
企業は早くも「もしトラ」→「確トラ」議論か
ホラン千秋キャスター:
アメリカの民衆は、こういう脅威に対してどう反応するのでしょうか。
明海大学教授 小谷哲男さん:
脅威を受けたときに特に、強い指導者のもとで一つになるのがアメリカです。9.11のときは、当時のブッシュ大統領のもとで一致団結し、支持率が90%を超えるということがありました。今回も同様にトランプ氏のもとに強い支持が集まると思います。
ホランキャスター:
今後、大統領選が続いていく中で、演説や討論会が行われると思います。同じことが起きないとは言えないと思いますが、警備はどう対応していくのでしょうか。
明海大学教授 小谷哲男さん:
警備は従来通りやっていくと思います。
トランプ氏はまだ正式な大統領候補になっていない状況です。共和党全国大会で正式に選ばれた場合、シークレットサービスの本格的な警護を受けられるようになります。
今回は本格的な警備が始まる前の隙を突かれたといえますが、これからはトランプ氏もバイデン大統領もさらに警護が強化されていくと思います。
経営コンサルタント 坂口孝則さん:
トランプ氏の有利な状況がより加速するだけで、大きな方向性は変わらないと思います。
企業人との間では今朝から、もしトランプ氏が大統領になった場合、どのようにサプライチェーンや物流、関税などが変わるのかなど、議論になっています。
企業人は色々な可能性を踏まえて戦略を検討するので、日本あるいは同盟国は「もしトランプさんが大統領になったら」に、意識が移っているのではないかと思います。
ホランキャスター:
前回、トランプ氏が大統領だった時には、様々なことが変わりましたね。
経営コンサルタント 坂口孝則さん:
企業人は戦略として、将来の見込みがわかりやすい方を好む傾向にあります。トランプさんが大統領になった場合、何が起きるかわからないので、どういう可能性があり得るのかリストアップしている状況です。
井上キャスター:
これまでは「もしトラ」と言われてましたが、「ほぼトラ」と言われているそうですね。
経営コンサルタント 坂口孝則さん:
今では「確トラ」と言われています。
井上キャスター:
今まで見てこなかった人や興味がなかった人もいると思いますが、今回の事件で、党大会に相当な注目が集まるのではないでしょうか。トランプ氏は、どのようなメッセージを発するのでしょうか。
明海大学教授 小谷哲男さん:
今回、流血しながらトランプ氏は力強い姿を見せたことで、「強い指導者」というイメージが確立したと思います。
そのイメージを使いながら、共和党や無党派を取り込むことを今回の党大会の目玉にするのではないかと思います。さすがにリベラルな民主党員までは難しいでしょうが、無党派をできるだけ取り込み、国民の団結を訴えるのではないかと考えられます。
井上キャスター:
今回、銃弾を受けていますが、銃規制への反対を変える可能性はあり得るのでしょうか。
明海大学教授 小谷哲男さん:
ほとんどないと思います。トランプ氏には「全米ライフル協会」の献金が必要です。今回は銃規制というより、警備の不備を批判していくと思います。
バイデン大統領は否定も“撤退望む声”消えず 他に候補者は?
井上キャスター:
バイデン大統領をめぐっては、11日(現地時間)に、ウクライナのゼレンスキー大統領を、ロシアのプーチン大統領と紹介する言い間違いがありました。
さらに同日、ハリス副大統領をトランプ氏と言い間違えました。
また、10日(現地時間)、民主党の“大口献金者”で、俳優のジョージ・クルーニーさんから撤退要請が出されましたが、バイデン大統領は「俺が戦う」と一貫しています。
この状況で、大統領選をバイデン大統領で戦うのかなど、日本でも連日報道されています。
ホランキャスター:
バイデン大統領も不安要素はいくつもあるでしょうし、各方面から「撤退したほうが良い」という声が上がっていますが、バイデン大統領でなければ、誰がトランプ前大統領に対抗できるのか…民主党としても苦しいところなのでしょうか。
明海大学教授 小谷哲男さん:
この銃撃事件の前までは、「副大統領のハリス氏を大統領候補にした方がいい」という声が強まっていました。
ただ、あれだけトランプ氏の力強い姿を見せられてしまうと、ハリス氏でも勝てないだろうということで、おそらくバイデン氏をこのまま候補にし、トランプ氏とは違った良識的で安心感を与えるリーダーという形で、全面に出していくと考えられます。
ホランキャスター:
民主党はかなり難しいのでしょうか。
経営コンサルタント 坂口孝則さん:
81歳のバイデンさん、元気だと思いますが、アメリカ大統領という仕事があまりにも過酷なため、民主党員の中でも「このままいくと、まずいのではないか」との見方が広がっていると思います。今後、誰が次の候補に選ばれるのか、注目したいです。
井上キャスター:
民主党はもう打つ手なしですか。
経営コンサルタント 坂口孝則さん:
ハリスさんやミシェル夫人の名前が挙がっていますが、現実的ではない気がします。
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<プロフィール>
小谷哲男さん
明海大学教授
アメリカの外交・安全保障政策に詳しい
日本国際問題研究所 主任研究員
坂口孝則さん
「ビジネスモデル」に詳しい経営コンサルタント
原価・物流・調達・マーケティングが専門
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