イスラエル軍の空爆でパレスチナ市民が犠牲になり、嘆き悲しむ人たち=パレスチナ自治区ガザ地区南部ハンユニスで7月13日、ロイター

 イスラエル軍が13日に行ったパレスチナ自治区ガザ地区南部ハンユニスでの空爆を巡り、ガザの保健当局は同日夜、死者は少なくとも90人になったと明らかにした。イスラエル軍は、イスラム組織ハマスの軍事部門トップ、ムハンマド・デイフ氏を標的にしたとしているが、ネタニヤフ首相は同日夜の記者会見で、デイフ氏の生死については「絶対的な確証はない」と述べた。

 デイフ氏は、ハマスのガザ地区の指導者シンワル氏に次ぐ最高幹部とされる。仮に殺害したとすれば、イスラエル側にとっては大きな節目となる。一方、ハマスはイスラエルの主張は「虚偽」だと指摘し、市民への攻撃を正当化しようとしていると非難した。

 イスラエルの陸軍ラジオなどによると、デイフ氏は、イスラエル軍が「人道地区」と称して市民の避難先に指定している、マワシ地区の建物にいた。軍はデイフ氏が潜伏している可能性があるという情報を攻撃の数時間前に入手。イスラエルの人質がいないことを確認し、作戦を実施したという。

 ハマス側は、空爆当時、デイフ氏は現場付近にはいなかったとして、犠牲者は全員が民間人だったと主張する。サウジアラビアのメディアはデイフ氏が重傷を負ったと報じたが、これも否定。ハマス幹部は「空爆はイスラエルが停戦合意に関心がないことを示している」と述べた。

 デイフ氏は、イスラエル軍が標的にしている最重要人物の一人だ。これまで公の場所に現れたことは一切ないが、イスラエルによる数々の暗殺計画をくぐり抜けたとして、ガザではカリスマ的な人気があるとされる。昨年10月7日の越境攻撃の首謀者とされ、イスラエルが行方を追う。

 地元テレビ局によると、イスラエル当局者は、ガザでのハマスの意思決定は、デイフ氏とシンワル氏が担っていると分析する。デイフ氏を殺害したとすれば「ハマス指導者の半分を攻撃できたことになる」と指摘した。

 一方、目撃者からは、空爆は避難民のテントに直撃したとの証言が出ている。ロイター通信によると、マワシ地区に避難するシェイク・ユセフさんは「テントを出て周辺を見渡すと、高齢の女性が投げ出され、幼い子どもたちの体がバラバラになっていた」と嘆いた。現場周辺には遺体や体の一部が散乱しているという。

 今回の空爆を受けて、エジプト外務省は「パレスチナの人々に対する暴力は、停戦に向けた努力に深刻な複雑さをもたらしている」と指摘。ヨルダン外務省も、イスラエルの攻撃を国際法違反と非難した。

 イスラエル軍は13日、ガザ地区の他の地域でも攻撃を実施。ガザ市での空爆では少なくとも10人が死亡した。昨年10月以来のガザ側の死者は3万8443人となった。【エルサレム松岡大地】

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