握手するインドのモディ首相(左)とロシアのプーチン大統領=ウズベキスタンのサマルカンドで2022年9月16日、スプートニク通信・ロイター

 インドのモディ首相は8~9日、モスクワを訪問してロシアのプーチン大統領と会談する。モディ氏の訪露は2019年以来で、ロシアによるウクライナ侵攻の開始後では初めて。インド側には、欧米とロシアの双方を重視する「バランス外交」をアピールしたい思惑があるとみられる。8日夜にプーチン氏主催の夕食会が開かれ、首脳会談は9日に実施される予定だ。

 総選挙後、3期目の政権が6月に発足して以降、モディ氏は主要7カ国首脳会議(G7サミット)に合わせてイタリアを訪問したが、2国間関係のための外遊はロシアが初となる。従来、首相の最初の外遊先は近隣諸国が多かったが、今回は慣例を破る形になった。

 インド国内では、国境紛争を抱える中国に、伝統的な友好国であるロシアが接近することへの警戒感が強い。インドとしては対露関係重視の姿勢を強調し、中国をけん制する狙いもあるとみられる。

 今回の訪問では、主に防衛や貿易分野の協力について協議する見通しだ。インドは長年、兵器の多くをロシアから輸入してきたが、ウクライナ侵攻後は供給の遅れが報じられている。また、インドは欧米の対露制裁で値崩れしたロシア産原油を買い増ししてきたが、原油輸入の増加に伴う対露貿易赤字が拡大している。5日に記者会見したインドのクワトラ外務次官は「貿易の不均衡がロシア側との協議の優先事項となる」と語った。業者にだまされるなどしてロシア軍に雇用されたインド人の早期帰国も改めて要請する。

 首脳会談が予定される9日は、米国での北大西洋条約機構(NATO)首脳会議の日程と重なる。だが、クワトラ氏は「我々は対露関係を純粋に2国間の枠組みで捉えている」と述べ、タイミングは無関係と説明した。

 印露両首脳が前回会談したのは、22年9月に上海協力機構(SCO)首脳会議が開かれたウズベキスタンのサマルカンドだった。当時、モディ氏は途上国が食料やエネルギー安全保障の問題に直面しているとして、「今は戦争のときではない」と訴えてウクライナ侵攻の早期停戦を要求した。インドはこの問題で「中立的な立場」を強調しており、対話や外交による早期の停戦を繰り返し求めている。【ニューデリー川上珠実】

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。