イラン大統領選に勝利した後、聴衆を前に演説するペゼシュキアン氏=テヘラン郊外で2024年7月6日、WANAロイター

 イラン大統領選で勝利した改革派のペゼシュキアン元保健相(69)は6日、首都テヘラン郊外で当選後初めて聴衆を前に演説し、欧米の経済制裁解除などを目指して「あらゆる努力をする」と語った上で「国家の利益のために、ともに歩もう」と訴えた。米欧との対話を巡り、国会の大半を占める保守強硬派の反対も予想される中、国内の結束を改めて呼びかけた。

 イランの政治勢力は、米欧との対決姿勢が目立つ保守強硬派▽対話を重視する改革派▽その中間に位置する穏健派――に分かれている。2015年に欧米と「核合意」を成立させたロウハニ政権は穏健派だった。改革派の大統領はハタミ師以来、19年ぶりとなる。就任式は1カ月以内に行われる見通し。

演説会場に到着したペゼシュキアン氏に携帯電話を向け、写真や動画を撮る支持者ら=テヘラン郊外で2024年7月6日、AP

 イランメディアによると、最高指導者ハメネイ師は6日の声明で「選挙期間中の競争を友情に変え、全員が発展に向け努力しなければならない」と強調。精鋭軍事組織「イラン革命防衛隊」のサラミ司令官も同日、新政権に協力する意向を表明した。保守強硬路線を取る指導部にとって改革派の勝利は「誤算」とも言える事態だ。だが、ライシ前大統領の急死がきっかけとなった異例の権力移譲に際し、国内の協調を重視した形だ。

 開票結果を受け、国外からは当選を祝う声が相次いだ。国営新華社通信やタス通信などによると、中国の習近平国家主席は6日に送った祝電で「複雑な地域・国際情勢に直面する中、中国とイランは常に支え合ってきた」と指摘し、今後も関係を深める意向を伝えた。ロシアのプーチン大統領も「あらゆる分野で、建設的な2国間協力を促進してくれることを期待している」との声明を発表。ライシ政権下の23年3月に中国の仲介で関係正常化を果たしたサウジアラビアのムハンマド皇太子は「両国の利益のため、国家・国民間の関係を深め、発展させることを望んでいる」と祝意を伝えた。

 ライシ政権は米欧による経済制裁が続く中、中露との連携や中東諸国との関係改善を通じて経済活性化を図ってきた。ペゼシュキアン氏も、引き続き中露と良好な関係を保つとみられる。【カイロ金子淳】

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