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 南アフリカで絶滅危惧種のサイを守るべく、ツノに放射性物質を注入する取り組みが進んでいる。一体、どういうことなのだろうか?

■密輸できなくなる魔法のようなアイデア

 先月27日、国際自然保護連合(IUCN)は、絶滅の恐れがある野生生物をまとめた「レッドリスト」の最新版を公表した。去年よりおよそ6000種増え、16万3040種となった。

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 南アフリカに生息するサイもその一つだ。現在およそ1万6000頭が生息しているとされるが、密猟によって17時間に1頭、年間にして500頭以上が命を奪われているという。

 そんなサイを救うため、南アフリカでは斬新な方法が注目されている。それが「サイのツノに放射性物質を注入する」という方法だ。

ツノに穴を開ける 放射性物質を注入 接着剤で穴をふさぐ

 サイのツノに穴を開け、放射性物質を注入し、接着剤で穴をふさいでいく。

 このプロジェクトは、サイを密猟者から守るために大学の教授たちが取り組んでいる。しかし、なぜ放射性物質なのか?

密猟を減らすため ウィットウォーターズランド大学
放射線・健康物理学長
ラーキン教授

「密猟を減らすためには、今までと違う、何か新しいことをしなければならないのです。サイのツノの価値を下げるために、放射性物質を注入しています」 がんの治療薬や精力剤になるといわれている

 サイのツノは、がんの治療薬や精力剤になるといわれ、医学的根拠はないものの、アジア各国で1本数千万円もの価格で取引されることもあるという。そのため、放射性物質をツノに注入し、薬として摂取できないものにすることでサイのツノの価値を下げ、密猟を減らそうという方法を編み出したのだ。

 「放射性物質」という一見、サイにも危険を及ぼしそうな方法だが…。

魔法のようなアイデア プロジェクトメンバー デヴェンター氏
「サイにとっては安全ですが、密猟者が密輸できなくなる魔法のようなアイデアです」

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■技術の応用可能も…残る課題

■技術の応用可能も…残る課題

 密猟対策としてサイのツノに放射性物質を注入する取り組みの詳細を見ていく。

従来の対策

 これまで南アフリカでは、サイを密猟から守るために、サイのツノに薬としての効果がないことの周知や取り締まりの強化など様々な取り組みを行ってきた。

 また、AP通信によると、密猟者に狙われないように保護団体が事前にツノを定期的に切り落とす取り組みも行っているという。

 ちなみに、サイのツノは人間のツメのようなもので、神経はなく、切り落としてもまた生えてくるそうだ。ただ、ツノを失うことでサイの社会生活に支障をきたすリスクもあるという。

 放射性物質をツノに注入する新たな取り組みの利点は、こうしたリスクを回避できるだけではない。

利点

 プロジェクトのホームページによると、空港や港などの交通の拠点には放射線の検出器が設置されているため、放射性物質が注入されたツノは密輸がより困難になるという。

 また、密輸者は放射性物質を所持していたことになり、テロなど従来より重い罪に問うことができるというのだ。

技術の応用

 この技術は、サイのツノ以外にも応用が可能だといい、今後、ゾウ(象牙)やセンザンコウ(ウロコ)などに用いる研究が進められる予定だという。

課題

 一方で、密輸者は放射性物質の検出器があるような通常の輸送手段を避ける傾向にあるため、その効果を疑問視する声や放射性物質を注入された動物が野生で死んだ場合の対応など、実用化までには解決すべき問題がまだ残っているようだ。

(「大下容子ワイド!スクランブル」2024年7月2日放送分より)

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