バージニア大法科大学院のサイクリシュナ・プラカシュ教授=本人提供

 トランプ前米大統領が2020年大統領選の結果を覆そうとしたとして起訴された事件で、連邦最高裁は1日、大統領在任中の公的な行為には原則的に「免責特権」が適用されるとの判断を示した。起訴内容となっているトランプ氏の行為も広く免責の対象となる可能性があるとして、公的なものか、公的でないものかなどを判断するよう下級審に審理を差し戻した。

バージニア大法科大学院のサイクリシュナ・プラカシュ教授

 米国の制度では、大統領には一定の憲法上の権限があるが、同時に一定の法律上の権限もある。最高裁の判事らは、憲法上の権限については絶対的な免責があるとし、法令で認められている他の公的な行為も、少なくとも推定的には免責されるとの判断をした。これらは推定的な免責を超え、絶対的な免責になる可能性も示唆された。

 多数派の判事らは、これで大統領は訴追される可能性を考えずにさまざまな決断ができると考える。一方、反対派の判事らは「大統領は好きなことをしても責任を問われない」と批判している。

 ただ大統領が行ったとされる全ての行為が憲法上の行為であるか、公的な行為であるかについてはまだ決定されておらず、差し戻しを受けた連邦地裁が判断することになる。トランプ前大統領に不利な決定が出るかもしれない。

 とはいえ、地裁で何らかの結論が出ても、トランプ氏側は控訴するだろう。つまりこの免責の裁判は事実上、11月の投票日までに結論は出ない。

 トランプ氏の戦略は、有罪判決が出ないように裁判を遅らせることだった。今回の結果は、2020年大統領選を巡る首都ワシントンと南部ジョージア州、そしておそらく機密文書の持ち出しを巡る南部フロリダ州での裁判を数カ月遅らせるという効果をもたらすだろう。選挙前にこれら3件のいずれについても決定的な決着がつくとは思えない。【構成・西田進一郎】

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