中東カタールの首都ドーハでロシアの政府代表と会談するタリバン暫定政権のムジャヒド報道官(奥右)ら=2024年6月30日、タリバン暫定政権報道官事務所・AP

 アフガニスタン情勢について欧米など20カ国以上の政府代表が協議する国連主催の会議が6月30日、2日間の日程で中東カタールの首都ドーハで始まった。アフガンの実権を握るイスラム主義組織タリバン暫定政権が初めて参加し、経済制裁の解除を求めた。タリバンが復権した2021年8月以降、アフガンでは女性に対する学校教育が制限されているが、会議にはアフガン人女性は招待されず、人権活動家らから批判の声が上がった。

 「アフガンの経済的な障害に対する解決策は、制裁を解除し、政府とアフガンの国民が国の経済再生のために制限なく能力を発揮できるようにすることだ」。タリバン暫定政権のムジャヒド報道官は30日の会議の冒頭でそう訴えた。「西洋諸国とも建設的な関わりを持ちたい」とした上で「我々が守る宗教や文化的価値観」は認められなければならないと主張した。

 同様の会議は3回目だが、タリバンの参加は初めて。タリバン暫定政権の外務省は2月に開かれた2回目の会議に際して「イスラム首長国(タリバン)がアフガンの唯一の正式な代表」として参加することなどを国連に求める声明を発表し、開催直前に参加を拒否した。タリバン以外のアフガン人も会議に招待されたことなどに反発したとみられる。

 今回の会議ではアフガンの経済的な課題や麻薬対策が協議される予定で、タリバン暫定政権幹部は取材に対して「今回は前向きな変化が見られ、論争になるような議題は見当たらない」と語った。会議は1日までで、公式な会議外で各国の代表がアフガンの市民活動家らと面会する機会が設けられる見通しだ。

 タリバンが復権した21年8月から間もなく3年となるが、タリバン暫定政権を正式に承認した国はいまだにない。

 パキスタンのマンスール・アフマド・カーン元駐アフガン大使は、タリバン以外の勢力も参加する包括的な政権樹立や女性の教育の保障などを求める国際社会と、タリバンとの隔たりは大きいとする一方、タリバンの会議参加について「大きな進展だ」と評価。アフガンを長く孤立させるのは国際社会にとって好ましくないとした上で「タリバンが世界とつながる姿勢を見せているのは重要だ」と指摘した。

 一方、女性の教育の重要性を訴えてきたノーベル平和賞受賞者マララ・ユスフザイさんはX(ツイッター)で会議について「少女や女性の人権は最優先事項ではないとする誤ったメッセージを伝えてしまう」と批判した。タリバンはイスラム法の範囲内で女性の権利を尊重するとしているが、アフガンでは女性は小学校までの学校教育しか受けられない状況が続いている。【ニューデリー川上珠実】

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