香港がイギリスから中国に返還されてから、きょうで27年となるなか、「国家安全維持法」の施行により反政府的な言動への取り締まりは、ますます強まっています。学校教育についても着々と「中国化」が進められています。
きょう、中国返還27年を迎えた香港。日本時間の午前9時ごろから中国国旗を掲揚する記念式典が行われました。
返還当初は「言論の自由」など、高度な自治を認める「一国二制度」を50年維持するとされていましたが…
記者
「香港は通勤通学の時間帯ですが、すでに警察が警備に当たっています」
4年前に施行された「国家安全維持法」が香港社会を大きく変えました。3月には「国家安全維持条例」も施行され、反政府的な言動に対する取り締まりは一層強化されています。
多様な意見を育んできた学校教育も標的となりました。
香港の現役教員
「学校の変化は大きいです。国家に関する良くない情報について話してはいけないのです」
JNNの取材に応じた学校勤務15年以上の小学校教員の男性は、他の多くの教員と同様、民主派を支持していましたが、今は政治スタンスについて一切触れないようにしているといいます。
香港の現役教員
「『私たちは授業では政治のことは討論しませんよ』、そういうトーンで児童に話します」
カリキュラムも変更されました。高校では、時事的な事柄について様々な立場の意見を学ぶことができた「通識」という授業が、国安法の施行後、別の科目に置き換えられてしまいました。
先日、イギリスに亡命した香港の民主活動家も「通識」が廃止された影響は大きいと話します。
英に亡命 香港の民主活動家 鄭文傑さん
「この変化は大きな意味を持ちます。生徒らにナショナリズムを強制するために『通識』が愛国主義的な教育に取って代わられたのです」
変更は小学校でも。来年から新たに始まる「人文科」は、「愛国」や「国安法」についても学ぶことになります。
愛国教育でこのまま“中国化”が進めば、教員は政府の立場を代弁させられる可能性もあります。
5年前の大規模なデモについても、民主派としての自分の意見を曲げざるを得ないかもと心配します。
香港の現役教員
「2019年のデモは暴力的で社会秩序を乱したと、政府にあわせた立場で明確に言わなければいけないかもしれません」
退職した教員の数は国家安全維持法の施行以降、急増しています。
そんななかでも、男性教員が教壇に立ち続ける理由とは。
香港の現役教員
「信念を持った先生たちは、生徒や児童が自分で物事の是非を考えたり、背景を判断できるよう導くことができます。教育の最後のラインを守っていくということです」
ますます統制を強める香港。新しい愛国教育は市民にどのような変化をもたらすのでしょうか。
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